研究実績の概要 |
1923年関東地震では、翌日までにマグニチュード7クラスの余震が震源域で少なくとも4つ発生したとされている。しかし、この全容を解明した研究はかつて実施されていない。本研究では、関東地震とその余震群について、国内と海外の古地震記録を可能な限り収集・分析し、関東地震の一連の震源過程を解明するとともに、これらの総和としての歴史震度分布を再現する。その際、最新の震源過程解析手法と高精度の地下構造モデルを用いることにより、関東地震シーケンス全体の断層破壊のメカニズムとその物理を明らかにする。そして、その結果が影響する首都直下地震の地震ハザード評価を革新することを目指す。
初年度は、国内外に存在する関東地震の本震のみならず余震群の古地震記録を収集し、デジタイズを行い、その一部を古地震記録のデータベースに収録した(Murotani, 2019; Murotani et al., 2020)。近地記録に関しては、東京大学本郷に設置された今村式2倍強震計を主に使用予定であるため、今村式1倍強震計も含めた精査を行っている。遠地記録に関しては、米国カリフォルニア大学バークレー校の協力を得て、これまでに主に使用されていた本震のみならず余震群の記録を良質な形で入手した。また、中小地震の再現性の検証に用いるため、関東地方の強震データベースを整備した(三宅・他, 2018)。加えて、強震動予測における課題を整理した(Koketsu et al., 2018; Miyake and Irikura, 2018; Miyake, 2019)。この他、古地震記録を精査し、関東地震とその余震群について、最新の関東地域の地下構造モデルを用いて、単独の地震から推定される震度分布を試算し、震度分布に着目した中小地震の地震動再現度を確認した。
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