研究課題
本研究の目的は,未知の小規模噴火とそれに関連した火山泥流の発生履歴を解明することで,従来では正確に捉えられなかった小規模噴火活動の実態を明らかにし,火山災害リスクの再評価を行うことである。本研究は,火山周辺の平野地下や湖底下の地層中に挟まる火山泥流堆積物を解析し,その特性や年代に基づき,小規模噴火の履歴,噴火様式(マグマ噴火か水蒸気噴火か),噴出温度を復元することを試みる。活動的な安達太良火山・磐梯火山をモデルケースとして,火山下流の平野と湖底のコア堆積物を用い,高時間分解能での解析を行う。本年度は,初年度に実施した陸上ボーリングの磐梯火山南麓斜面の1地点(25m深),安達太良火山西麓の酸川盆地の1地点(32m深)について解析を進めた。そのうち酸川盆地コアに見られた,イベント堆積物(泥質の火山泥流堆積物,13層;砂質イベント堆積物,4層;礫質(巨礫を含む)イベント堆積物,1層)中に含まれる有機物または上下に挟在する古土壌層の14C年代値を新たに得た。その結果,酸川盆地の露頭から発見された安達太良火山由来の泥質火山泥流堆積物(片岡ほか,2015)よりも,より古い年代値を示す約31,000~32,000年前(暦年値)の泥流堆積物が少なくとも5層あることが明らかとなった。酸川コアで見られるイベント層全体は,その年代値から,陸上の露頭(片岡ほか,2015)と既存の猪苗代湖湖底コア(Kataoka and Nagahashi, 2019)に見られるイベント層と対比できる可能性がある。既存湖底コアについて粒度分析・化学分析・粘土鉱物解析から,イベント層の成因および磐梯山1888年噴火由来のイベント層と2011年地震性タービダイトの空間的分布をとりまとめて,学会発表を行った。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け,実施業者の全体の計画が大きくずれ込み,コアリングによる湖底堆積物採取が実施できなかったため。
重要な湖底コアリングが次年度となるが,土砂採取に係る許可申請など事前準備を進めており,夏以降のなるべく早い時期に,湖底堆積物の採取を行う。その後,迅速にコア記載を行い,イベント堆積物の抽出を行う。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)
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