研究課題/領域番号 |
18H01293
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
横川 美和 大阪工業大学, 情報科学部, 教授 (30240188)
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研究分担者 |
石原 与四郎 福岡大学, 理学部, 助教 (80368985)
泉 典洋 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10260530)
岩崎 理樹 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (70727619)
中嶋 健 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (20357627)
成瀬 元 京都大学, 理学研究科, 准教授 (40362438)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 混濁流 / 高流砂階ベッドフォーム / サイクリックステップ / 堆積構造 / 堆積モデル |
研究実績の概要 |
混濁流は地球表層で最も多くの堆積物輸送を担う現象であり,過去の混濁流によって形成された海底扇状地は石油や天然ガスの良好な貯留岩として注目されている.また,混濁流の堆積物は過去の自然災害の規模や頻度を推定する鍵になる.混濁流は内部フルード数が高くなりやすいため,高流砂階(フルード数>1)の微地形を形成しながら堆積するはずだが,それによってどのような堆積構造が地層に残されるのかはわかっていない.本研究は[1]高流砂階の混濁流によって形成される微地形・内部堆積構造と水理条件との関係を水路実験によって体系的に明らかにすること,[2]混濁流による堆積体形成の堆積モデルを構築することを目的とする. 2021年度は2019年度に中断した後の復活分について,研究を行なった.研究実績の概要は以下の通りである.(1)大阪工業大学の水路でこれまでよりも流量の多いサージ的混濁流により,サイクリックステップを形成する実験を行った.また,実験の結果得られた堆積物の粒度分析を行った.(2)混濁流によるサイクリックステップの形成についての数学モデルを作成し,現地観測結果を良好に説明する比較検証結果が得られている.(3)数値シミュレーションでは,レイノルズ平均型の数値計算モデルを用いて様々な混濁流条件での数値計算を行った.また,新たに,混濁流の平面2次元浅水流4方程式モデルを開発し,サイクリックステップ形成時の粒度分別についてもシミュレーションを行なった.(4) 地層の調査は主に,宮崎層群に見られるセディメントウェーブ堆積物の詳細な調査を行った.(5)リサーチミーティングを通じて,意見交換を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況は以下の通り(番号は6「研究実績の概要」と対応).(1)大工大の水路実験では,中断前に行った実験の約5倍の流量でのサージ的混濁流によってサイクリックステップが形成された.堆積物表面の流れ方向および堆積物の鉛直方向について詳細な粒度分析を行なった結果,下流へ粗粒化する傾向が見られた.下流粗粒化のメカニズムについて検討中である.(2) 混濁流の海底面近傍の薄い層では平衡状態が仮定できることを用いて,サイクリックステップの形成理論を構築し,サイクリックステップの形状および波長を理論的に導いた.現在,様々な現地観測結果を収集し比較検討を行うことで,モデルの妥当性を検証中である.(3)開発した鉛直二次元数値計算モデルを,種々の混濁流に関する室内実験に適用し,実験で測定された流速や浮遊砂濃度を妥当な範囲で再現できることを確認した.このモデルを現地スケールの条件へ適用し,サイクリックステップの形成条件に関して検討した.また,新たに開発した平面2次元浅水流4方程式モデルでは,混合粒径の砕屑物輸送を考慮し,サイクリックステップ形成時に上流側斜面と下流側斜面で粒度分別が起こりうることを再現できた.(4)宮崎層群のセディメントウェーブの単層の層厚変化についてより詳細な情報を得るため,レーザースキャナおよびフォトグラメトリーによるオルソ画像を作成した結果,高精度の変化を捉えることができるようになった.一方,本研究で,海底堆積物の事例として扱っている富山深海長谷の発達過程とその最初期の混濁流堆積物についても,混濁流発生の背景と関連して考察を行なった.(5)研究分担者・研究協力者も含めて,オンラインでリサーチミーティングを行い,意見交換を行なった.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は以下の通り(番号は6「研究実績の概要」と対応). (1)水路実験:サイクリックステップを含む高流砂階のベッドフォームの混濁流による形成条件と堆積構造についてさらに実験を行う.水路実験は主に大阪工業大学で行う.粒子径測定装置CAMSIZER X2を用いた粒度分析も行う (2)数値モデル作成:実験結果に基づき,混濁流による高流砂階ベッドフォーム形成についての数学・水理モデルの作成を進める.これについては主に研究分担者の泉,成瀬が行う. (3)数値シミュレーション:研究分担者の岩崎が開発してきたレイノルズ平均型の方程式を用いた流れモデルによる数値シミュレーション,および,研究分担者の成瀬が開発した平面2次元浅水流4方程式モデルについて,シミュレーション結果と水路実験の結果を照合し,更なるモデルのブラッシュアップを図る. (4)地層調査:宮崎層群の堆積構造の分布のほか,チャネルからローブへの地形変化の影響などとの関係をまとめる.野外調査は主に研究分担者の石原が行う. (5)混濁流の現地観測,現世の海底地形,音波探査記録との比較:随時,水路実験の結果と既存の海底地形・音波探査記録データとの比較を行う.これは主に,研究分担者の中嶋と横川が研究協力者の高野,大野, Hughes Clarke, Talling, Xu, Kneller,Southampton UniversityのSophie Hage, ニュージーランド国立水・大気圏研究所のJoshu Mountjoy,Yanwei Zhang博士(中国同済大学)らの協力を得て行う.
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