研究課題/領域番号 |
18H01295
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
亀田 純 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (40568713)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 北海道胆振東部地震 / 表層崩壊 / ハロイサイト |
研究実績の概要 |
本研究課題を本格的に開始した昨年(2018年)9月6日に、北海道南西部を震源とする北海道胆振東部地震が発生した。最大深度7を記録した震源付近の丘陵地では、地震に伴って大規模な地滑りが同時多発的に発生し、多くの方が犠牲となった。本研究課題は、海底における堆積物重力流現象を研究対象と設定していたが、上記の地すべりの発生を受けて、陸上の重力流現象ではあるものの優先して調査・研究の対象とすべきと判断し、研究資源の一部を投入して現地調査、試料分析、室内実験などを行った。 表層崩壊型地すべりが多発した北海道厚真町付近の地すべりサイトにおいて調査を行った結果、海成層直上の火山灰層(Ta-d層)がすべり面になっていること、火山灰層には風化生成物としてハロイサイトが含まれていること、液性限界を超える水分量を保持していること、などが明らかとなった。また、すべり面試料を自然含水量状態にして粘弾性実験を行ったところ、バイリニアモデル(低歪み速度領域では高粘性のニュートン流動+高歪み速度領域ではビンガム流動)で記述される流動曲線が得られた。このことは、すべり面の降伏応力が極めて小さく、容易に流動する状態にあったことを示唆している。さらに、火山灰層の液状化を示唆する構造が数カ所の滑落崖において観察された。以上のことから、地震発生時の強い地震動が、火山灰層の液状化に伴う弱面を形成し、斜面の不安定化を引き起こしたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
北海道胆振東部地震に伴う大規模地滑りの発生を受けて、計画の一部を変更し、当該地すべりの調査・研究を優先して実施した。このため、本来の研究対象である海底地すべり・土石流に関する研究の進捗はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
上記の地すべり発生後に複数回の緊急現地調査を行い、試料分析、室内実験を急ピッチで進めてきたことにより、当該地すべりに関して一定の成果を得ることができた(論文投稿中)。今年度以降は軌道修正して、本来の研究課題を推進する予定である。分析・実験手法には共通する部分が多く、また昨年度の研究によりこれらについて大幅な改善を図ることができたため、今後は当初のプランに沿って研究を推進していくことに大きな問題はない。
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