今年度は、2018年北海道胆振東部地震にともなって発生した地すべりを対象として、すべり面試料の鉱物分析や粒子の表面物性測定を行った。分析の結果、すべり面には不定形~球形を呈するハロイサイト粘土鉱物が50%程度含まれていることが分かった。ガス・水蒸気吸着実験の結果、このようなハロイサイトはチューブ状のものに比べて高い吸水性・保水性を示すことが分かり、この性質が降雨後の土砂の長期間にわたる弱化機構に関連している可能性が示唆された。 また斜面を構成する土砂のレオロジー特性とその流下挙動の評価を目的とするインバージョン解析も並行して行った。今回対象とした地すべりは、震源に近い厚真町朝日地区において表層崩壊を起こして発生したものであり、南西方向に20度傾斜した斜面にそって土砂がおよそ100m流下した。インバージョン解析にはマルコフ連鎖モンテカルロ法を採用し、現地調査で得られている堆積土砂形状とモデル計算の残差を最小とするレオロジーパラメータ(降伏応力、塑性粘度)の最適化を試みた。フォワードモデルには、土石流の解析用に開発されたBINGを採用した。解析の結果、降伏応力と塑性粘度はそれぞれ1500 Pa、800~3000 Pa.s.と見積もられ、このとき堆積土砂の形状をほぼ再現できることが分かった。この解析によれば、地すべり発生時の土砂先端の速度は6~9m/sに達し、発生から2-4分以内には流動がほぼ停止したと推定される。
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