研究課題/領域番号 |
18H01296
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
奥村 聡 東北大学, 理学研究科, 准教授 (40532213)
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研究分担者 |
小園 誠史 東北大学, 理学研究科, 准教授 (40506747)
伊藤 正一 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60397023)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マグマ破砕 / 爆発的噴火 / 減圧結晶化実験 / 噴火推移予測モデル / 脱ガス |
研究実績の概要 |
火山噴火の爆発性を決定づけているのは,地表へ上昇するマグマの破砕である.マグマ破砕は高粘性流体であるマグマの流れを,マグマの飛沫を含む低粘性ガス流へと変化させることで爆発的噴火を引き起こす.破砕メカニズムには,マグマ中に形成された気泡の体積が十分に大きくなった場合と気泡の急成長によってマグマが脆性的挙動を示す場合が考えられているが,どのようなメカニズムで爆発的噴火が誘発されているかは未解明である.本研究では,どのような破砕メカニズムが爆発的噴火を誘発しているか明らかにするために,マグマ中の微結晶形成を利用したマグマ圧力計を実験的に作成し,それを国内3火山の爆発的噴火の噴出物に応用することでマグマが破砕した圧力を決定する.そして,得られたマグマ破砕圧力を説明できる破砕メカニズムを明らかにし,噴火推移予測モデルを構築 することが最終目標である.本年度は,(1)前年度までに構築した減圧実験装置を用いて,有珠火山1977年噴火の減圧再現実験を行い,(2)有珠火山1977年噴火の噴出物の調査と解析を進めた.これらの結果から,有珠火山噴出物の微結晶組織を再現するために必要な減圧率や破砕圧力がおおよそ制約できた.また(3)実験で得られた結晶化速度を考慮したマグマ上昇の物理モデルの構築を進めた.昨年度と今年度の研究より,結晶化によってマグマ粘性が増加し,それが脆性破砕を誘発する可能性が示されつつある.一方で,粘性増加は流動に伴う圧力低下を誘発し,結果として揮発性成分の析出,発泡を引き起こすこともわかってきた.今後,これらの複雑な関係を詳細に検討していく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた以下の計画は順調に進んだ. (1)昨年度構築した減圧実験装置を用いて有珠火山1977年噴火の減圧過程を再現し,減圧中の微結晶組織の変化を明らかにした. (2)有珠火山1977年の火山噴出物の調査と解析を進めた.斑晶中のガラス包有物や石基ガラス中の揮発性成分量をSIMSで分析する準備を進めた. (3)実験で得られた結晶化速度を考慮した火道流モデルの構築を進めた.新燃岳2011年噴火,有珠火山1977年噴火のマグマ上昇過程を再現することができた.
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今後の研究の推進方策 |
実験装置はすでに完成しており,分析手法,計算方法も確立することができた.本研究で対象としている新燃岳2011年噴火、有珠火山1977年噴火については,減圧速度・マグマ破砕圧力を制約できつつある.次年度は,もう一つの対象である桜島1914年噴火について減圧速度・破砕圧力を推定する.現状では,本課題を推進するにあたって大きな障壁は無い.
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