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2019 年度 実績報告書

花崗岩類の脆性ー塑性遷移領域での力学挙動と地殻応力に関する実験的研究

研究課題

研究課題/領域番号 18H01297
研究機関東北大学

研究代表者

武藤 潤  東北大学, 理学研究科, 准教授 (40545787)

研究分担者 奥平 敬元  大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (20295679)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード上部地殻 / 脆性-塑性 / レオロジー / 断層剪断帯 / 歪の局所化 / 地殻応力
研究実績の概要

本研究は、地殻の主要構成岩類である花崗岩類を用いた変形実験から、脆性-塑性遷移での変形挙動を解明することを目的としている。 今年度は、昨年度行った石英-長石-雲母を含む花崗岩組成のガウジ試料の定量的組織解析を行った。試料は過去の研究でも用いられており、主に20~30%石 英、40~50%長石、20~40%黒雲母からなるGneiss Minutiを使用した。剪断歪量の異なる3つの試料の電子顕微鏡画像(組成像)を用いた画像解析から、石英及び黒雲母の形状を抽出した。変形の進展(歪の増加)とともに、石英、黒雲母の伸長比は増加し、粒子の長軸は剪断方向へと回転し、多くの粒子がS面に平行に配列する。変形に伴い、石英は動的再結晶(亜粒回転再結晶)によりもともとの粒子は多結晶・細粒化する。黒雲母も細粒化し、c面に沿うすべりとキンクバンドの発達が認められた。剪断歪が3以上の試料では、試料を貫く剪断帯が発達し、細粒化・伸長化が著しいが、剪断帯から離れた領域ではさらなる粒子の伸長・細粒化は起こらない。このことはある程度の歪量を被った大きな剪断帯中では、剪断面以外は、ほとんど変形はおこらず、組織発達も停止することを示唆し、地質学的観察から報告されている剪断帯内での組織の不均質性に関して重要な示唆を持つ。またこれまで多くの研究で強い(強度の高い)地殻のアナログとして用いられてきた石英-長石を用いた変形実験も行った。これまでの実験ではカバーされていなかった地殻を縦断するような様々な圧力と温度の変形実験から、変形強度及び組織解析を行った。圧力・温度の増加とともにその剪断強度は増加し、もっとも高圧・高温で行った実験で剪断強度は最大となった。一方、組織解析から、圧力・温度の増加とともに、ガウジ中の粒子は脆性変形から塑性流動へと変化することが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は複数の鉱物からなる岩石の強度の歪・歪速度・圧力依存性などを精査することで、地殻応力の推定につながる花崗岩類の脆性-塑性遷移領域での上部地殻岩石の変形特性解明と構成則 (応力と歪・歪速度の関係式)の構築を目指している。上記の目的に対して、2年目は1年目に行った花崗岩組成試料の変形組織を定量的に解析し、新たに石英-長石類の変形実験を行った。特に、石英-長石―雲母の3相系岩石の微細組織観察からは、石英および雲母の形態変化を歪の関数として明らかにすることに成功した。また石英―長石集合体試料の変形実験を行うことで、黒雲母を含む試料との比較から、地殻強度における雲母鉱物の影響を明らかにすることが可能になる。さらなる広範囲な温度圧力条件での変形実験と組織解析により、上部地殻岩石の脆性-遷移領域周辺での変形挙動を明らかにすることができるだろう。

今後の研究の推進方策

本研究は複数の鉱物からなる岩石の強度の歪・歪速度・圧力依存性などを精査することで、地殻応力の推定につながる花崗岩類の脆性-塑性遷移領域での構成則 (応力と歪・歪速度の関係式)の構築を目指している。上記の目的に対して、これまで2年間では、上部地殻の構成岩石のアナログとして、石英-長石および石英-長石-黒雲母という2種類の多結晶体を用いて変形実験を行ってきた。今後は、得られた試料の組織解析を進めることで、脆性-塑性遷移領域周辺での構成鉱物それぞれの変形挙動を明らかにする。特に両試料の比較から、断層の力学挙動を制御する雲母類の影響を明らかにしていく。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)

  • [雑誌論文] 大陸下部地殻における破壊と延性剪断帯の形成2019

    • 著者名/発表者名
      奥平敬元・豊島剛志
    • 雑誌名

      地学雑誌

      巻: 128 ページ: 747-760

    • DOI

      :10.5026/jgeography.128.747

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Flow of Lower Crust and Upper Mantle Inferred from Geological and Geophysical Observations2019

    • 著者名/発表者名
      MUTO Jun、KIDO Masanori
    • 雑誌名

      Journal of Geography (Chigaku Zasshi)

      巻: 128 ページ: 731~745

    • DOI

      10.5026/jgeography.128.731

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Coupled afterslip and transient mantle flow after the 2011 Tohoku earthquake2019

    • 著者名/発表者名
      Muto J.、Moore J. D. P.、Barbot S.、Iinuma T.、Ohta Y.、Iwamori H.
    • 雑誌名

      Science Advances

      巻: 5 ページ: eaaw1164

    • DOI

      10.1126/sciadv.aaw1164

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著

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公開日: 2021-01-27  

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