研究課題
初年度である本年度はマラウイおよびインドの地質調査を実施し、当該地域の変成岩および火成岩類を採集してクーンガ造山帯の岩石学的・年代学的研究に着手した。まずマラウイについては平成30年7月に調査を行い、特に南部地域に露出している基盤岩類の地質調査を行った。室内での岩石処理の結果、この岩石は主に花崗岩および玄武岩を原石とした変成岩であること、変成作用の温度は800℃を超える高温の変成岩であること、また花崗岩である花崗岩の形成年代は10億年前の火山弧における火成作用で形成されたことなどを明らかにした。マラウイの基盤岩類について、このような系統的な研究をした例は初めてであり、その成果の第一報として12月に開催された極域科学シンポジウムにて成果を発表した。またインドについては、太古代の安定地塊であるバスター地塊の地質調査と岩石試料採集を平成31年1月に実施した。その結果、この地塊の形成は約28-25億年前の火成作用で形成された火山弧の花崗岩類を基盤とし、約16億年前の東西バスター地塊の衝突にともなう造山運動によって形成されたことを初めて明らかにした。なおこの研究成果は令和元年にElsevierの国際誌であるGondwana Researchに掲載され、高い評価を受けている。それ以外の研究として、すでに岩石試料を採集済みのクーンガ造山帯の他地域の研究を行った。たとえばジンバブエ・ザンベジ変成帯、スリランカ・ハイランド岩体、マダガスカル・イフシ岩体の岩石学的・年代学的研究を実施し、その成果を学術論文として国際誌に発表した。本研究の成果として、国際雑誌への論文掲載(オンライン公表済みを含む)11件、国際学会における研究発表8件、国内学会における研究発表12件がある。
2: おおむね順調に進展している
本年度の成果として、国際雑誌への論文掲載(オンライン公表済みを含む)11件、国際学会における研究発表8件、国内学会における研究発表12件があり、順調に成果をあげているため。
引き続きクーンガ造山帯に相当する南極-インド-スリランカ-アフリカ地域の地質調査および岩石試料採集と、室内実験を並行して行う。特に今後はまだデータの乏しい南部アフリカ地域の研究を集中的に実施するため、ザンビア東部、ジンバブエ北部、ボツワナ東部の研究に着手する。これら調査地域から岩石試料を採集し、岩石学的・年代学的研究を行う。ただし、この報告書を作成時点では新型コロナウィルスの影響により海外での地質調査が困難な状態にあるため、計画通りの調査実施が困難と判断された場合には、予算の一部を次年度に繰り越して調査を延長する可能性がある。そのような事態となった場合には、すでに採集済みの岩石について再度見直しを行い、岩石の成因についてより詳細な研究を実施する。最終年度である2021年度は主に成果公表および論文執筆活動を中心に行う。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 10件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 8件)
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