本研究では,地球史を通した大陸地殻の進化,特に変成過程を,モナザイトから明らかにすることを目的としている.モナザイトは幅広い変成条件下で成長するリン酸塩鉱物であり,堆積作用を経ても成長時の化学情報を保持する.この特徴を活かし,世界主要河川の川砂や堆積岩中の砕屑性モナザイトについてウラン-鉛年代を測定することにより,大陸地殻の変成年代頻度分布を得る.また,形成過程が既知な変成岩及び花崗岩中モナザイトの微量元素分析を行い,モナザイトの形成温度圧力条件の指標となる微量元素濃度パターンを特定する.確立した指標に基づき,新たに取得する砕屑性モナザイトの微量元素データから大陸地殻の変成条件を制約する.年代・微量元素分析の結果を統合し,地球史における大陸地殻の変成活動の衰退と性質の変遷を解き明かす.さらに,砕屑性ジルコンから推定された大陸地殻の火成活動史と併せ,包括的な大陸地殻進化のモデルを構築する. 最終年度では,北米及び南米大陸の主要4河川-ミシシッピー川,マッケンジー川,アマゾン川,パラナ川-について,砕屑性モナザイトのウランー鉛年代・微量元素・ネオジム同位体の同時分析をレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法により実施した.その結果,ミシシッピー川流域では主に17.5及び14億年前に,マッケンジー川では主に26及び2億年前に,アマゾン川では22,13,10,6億年前に,パラナ川では6億年前に,ウランー鉛年代のピークが見られ,この時期に大規模な造山運動があったことが明らかになった.さらに,得られた砕屑性モナザイトの微量元素組成を,前年度までに確立したモナザイトの形成条件指標微量元素パターンと比較することにより,それぞれの造山運動の性質を誓約した. これらの研究成果は,日本地球化学会,JpGU-AGU Joint Meeting,及びGoldschmidt国際会議で発表された.
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