研究課題
本研究では「地殻生産プロセスの多様性と時間変動を制約するのはマントルの化学組成の空間不均質性である」という作業仮説 を検証するため,海洋トランスフォーム断層の壁面が,過去1000万年から現在に至る海洋地殻~最上部マントルの連続記録であることを利用した観測を行う. 2018年度は,フィリピン海パレスベラ海盆のトランスフォーム断層を対象に(MOWALL-PVB)研究を行う予定であった.6月に,潜水船「しんかい6500」および支援母船「よこすか」により,海底露頭の観察・試料採取と地球物理観測を実施したが,天候悪化のため当初の計画していたパレスベラ海盆での観測は断念せざるをえず,第二候補地であった四国海盆の海洋コアコンプレックス (Ocean Core Complex, OCC)を対象に観測を行った.OCCは海嶺軸部でのメルト供給量が減少した際にマントルまで達する大規模な断層に沿って地殻深部・上部マントル物質が露出する構造である.当初計画の海域ではないため,メルト供給がほとんどない場合に出現する平滑海底(Smooth Seafloor, SS)との比較はできなかったが,引き続き実施された研究協力者による「白鳳丸」航海で四国海盆域の調査が行われ,OCC全体をカバーする良好なデータを収集することができた.観測航海後,地形,重力,地磁気の解析を実施し,OCC形成時における地殻物質の量の推移について予察的な結果を得て,学会発表を行った.取得された岩石試料は現在分析が進行中である.また,インド洋観測にむけて,磁力計の整備を行った.
2: おおむね順調に進展している
実績概要に記した通り,天候不良という不可抗力により,当初の観測海域を変更せざるを得なくなった.そのため,大きなメルト供給量変動を見るという当初の目的にはやや不十分なデータセットとなったが,研究協力者が実施した別の観測航海データを提供してもらうことができ,海洋コアコンプレックス形成時のメルト供給量変動に関する高分解能のデータを得ることができた.
フィリピン海については,第2候補地であった観測海域を対象とすることを余儀なくされたが,2019年度にも再び同海域で研究協力者による航海が採択されたため,さらに充実したデータセットが得られる見込みがたった.このデータと,本研究計画の主眼である次年度以降のインド洋観測をあわせ,研究を進める.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://ofgs.aori.u-tokyo.ac.jp/tilde/okino/mowall/