研究課題
海溝型地震の規模に関する沈み込むプレートの熱構造の関与を明らかにするため,世界一熱いチリ三重会合点(CTJ)への調査航海が,本研究の1年目(2019年1月)に完了した.本年度は,航海で得られた試料・データの計測・解析を実施した.航海では,海嶺軸上とその海側・陸側において6本のコア試料が得られた.高知大学の共同利用制度を利用し,日本で唯一の海洋コア総合研究センターで,X線CTスキャナーによる内部構造撮影、間隙水化学分析、密度・間隙率等の物性計測、元素組成スキャン,年代測定用サンプリング等を実施した.海嶺軸上は陸源堆積物が高速で大量に流入している.拡大軸から1段上昇した海側サイトは,堆積速度が速い底部と低速堆積の表層にきれいに分離し,正断層による隆起後にタービダイト堆積が停止したことを示唆する.海溝(~海嶺軸)の陸側斜面は陸源堆積物が少なく,密度は深度とともに漸増する傾向を示した.間隙水化学分析の結果,塩素イオン・硫酸イオン濃度ともに通常の堆積物中の間隙水の特徴に一致しており,熱水の兆候は見られなかった.航海時に得られた熱流量データ・地下構造データを既往研究と合わせて,沈み込む中央海嶺の熱モデル構築に着手した.本年度は,プレートの沈み込む速度が最初は高速だが海嶺沈み込むの後急激に低速になることに注目し,その熱的影響の予備的数値計算を実施した.コア試料に加えて,航海で得られたデータ(海底地形,地磁気,重力,地下構造,熱流量等),海底地震計設置,岩石試料採取等のオペレーションを記載した航海報告書を,JAMSTECおよびチリ政府に提出した.
2: おおむね順調に進展している
本年度交付申請書に記載の項目は,上述の通りほぼ完遂した.こあの年代測定は,予定よりも早く,かつ安価にできたため,追加で高頻度計測を行った結果,海嶺海側の堆積履歴が明瞭に描き出されたのは,想定以上の成果であった.ただ,1年目の研究の一部繰越項目(陸上観測)が,チリ側の都合により再繰り越しとなったため,熱構造の推定研究が一部滞ている状況である.
研究の最終年度として,コア計測データの解釈を継続すること,再繰り越し項目の実施,熱モデルの継続等を実施し,当初の目的である,巨大地震の規模と熱構造(海嶺沈み込み)の関連について取りまとめを行う.得られた成果を学会・論文に発表する.
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 5件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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