研究課題/領域番号 |
18H01308
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鷺谷 威 名古屋大学, 減災連携研究センター, 教授 (50362299)
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研究分担者 |
高田 陽一郎 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (80466458)
野田 朱美 気象庁気象研究所, 地震津波研究部, 研究官 (80793992)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 非弾性変形 / 地殻変動 / GNSS / InSAR / 2011年東北地法太平洋沖地震 / 2016年熊本地震 |
研究実績の概要 |
日本列島の島弧の地殻変動にはプレート境界の固着や断層すべりに起因する弾性変形と陸側の島弧内で生じる非弾性変形が含まれ、両者の適切な分離方法が求められている。2011年東北地方太平洋沖地震前後に得られたGNSS連続観測網の3次元座標値データに主成分分析を適用して異なる時空間パターンを持つ地殻変動成分の分離を試みた。その結果、地震前後の第1主成分に奥羽脊梁山脈における局在化した東西短縮変形が現れ、地震前後を通してパターンが変わらないことから非弾性変形が分離されたものと解釈した。また、日本海沿岸のひずみ集中帯の内と外のひずみ速度を比較することで媒質の力学特性を推定できる可能性が示された。 地震時の地殻変動は断層上で発生するすべりと地殻内に3次元的に分布する非弾性変形という空間スケールの異なる非弾性変形を含むと考えられ、これらを安定的に分離して推定することを目的として、断層すべりと3次元モーメントテンソル密度分布の同時インバージョン手法の開発を行った。本手法を2016年熊本地震(Mw7.1)時のGNSS変位データに適用した結果、熊本地震の震源断層上では従来研究と調和的なすべり分布が推定されたが、阿蘇カルデラ下のマグマ溜りの応答などの3次元的な非弾性変形を捉えることは出来なかった。しかし、自由度を上げたモデルにおいては誘発地震(Mw6)の発生した別府付近に非弾性変形が推定された。 跡津川断層地域のInSAR解析では、東北沖地震後のGNSSデータに見られる非線形の時系列を1次のスプライン関数で近似的にモデリングすることで、InSARデータに含まれる長波長ノイズを除去した。また、2008年岩手宮城内陸地震によって、栗駒山西方に局所的な非弾性歪運動が誘発されていることをInSAR解析により発見した。地殻内の低粘性領域と余効すべりの相互作用を考慮した数値モデルによって定性的な説明に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を通して非弾性変形に関する理解が進み、非弾性変形と弾性変形を分離して推定する手法が複数開発されている。同一地域のデータを異なる手法で検討することにより非弾性変形の分布やその大きさについて定量的な検討が可能になりつつある。また、本研究関係者の研究成果を通じて非弾性変形の重要性が研究コミュニティに浸透しつつあり、幅広い議論が可能となってきている。今後も研究を継続することにより、更なる進捗が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで本研究で開発してきた非弾性変形の解析手法は、巨大地震の発生により変形場が大きく変化することが必要で、適用可能性に限界がある。そこで、より幅広い事例に適用可能な手法として、弾性変形成分を変位境界条件から予測して除去し非弾性変形を抽出する手法の開発を試みる。また、弾性・非弾性歪み解析の従来手法(Noda and Matsu'ura, 2010)に対してこれまで検討してきた改良策を適用し、東日本のGNSS地殻変動データを解析する。そして、推定された非弾性歪み分布を他の解析手法により検出された非弾性変形と比較・検証する
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