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2019 年度 実績報告書

放射化学的手法を用いたハロゲンの地球化学の新展開

研究課題

研究課題/領域番号 18H01312
研究機関京都大学

研究代表者

関本 俊  京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (10420407)

研究分担者 白井 直樹  首都大学東京, 理学研究科, 助教 (00599805)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワードハロゲン / 標準物質 / 放射化分析 / 放射化学的中性子放射化分析 / 標準岩石 / シェール
研究実績の概要

ハロゲンは元素間で揮発性が大きく異なるため、各種物質におけるその存在度から、その成因や変成の履歴を議論する上で有効な元素である。しかし同元素は定量が困難なことから、地球化学的に興味深い未知試料はおろか、標準物質においてさえ、信頼できるデータがほとんど無く、それゆえ同元素を用いた地球化学に関する研究は制限されてきた。本研究では、研究代表者らが開発・改良した手法を用いて、様々な標準物質にハロゲンの正確な定量値を与え、ハロゲンを用いた地球化学の学術基盤を確立する。得られたデータを体系化し、地球上の物質におけるハロゲンの分布を知る。また同元素を用いた地球化学研究の例として、ヨウ素濃度の濃縮が知られるシェール岩石に注目し、ハロゲンを定量する。その結果からヨウ素の濃縮機構の解明を試み、地球化学分野のさらなる深化やエネルギー・資源問題に貢献する。具体的には、「地球上の物質(岩石、地殻、堆積物)にハロゲンはどのように分布しているのか?」という問いに答えるべく、研究を進める。
2021年度は、アメリカの地質調査所(USGS)が発行する一部の標準岩石試料について、研究代表者らが過去に公表したハロゲンの分析値と、近年、他のグループが公表した値との間で矛盾が見つかったため、USGSが発行している17個の標準岩石試料について、ハロゲンの再分析を行った。分析法は、RNAA(Radiochemical Neutron Activation Analysis, 放射化学的中性子放射化分析法)である。現在、一部、解析が続いており、その矛盾について、原因を究明中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度、当初は、研究代表者らが開発・改良したRNAAを用いて、様々な標準物質(特にIAEA及びフランスの研究所が発行したもの)について、ハロゲンの正確な定量値を与え、ハロゲンを用いた地球化学的な考察を進める予定であった。また同元素を用いた、興味深い地球化学研究の例として注目していた、ヨウ素濃度の濃縮が知られるシェール岩石のハロゲンの定量にも着手予定であった。しかし、年度当初に、アメリカの地質調査所(USGS)が発行する一部の標準岩石試料について、研究代表者らが過去に公表したハロゲンの分析値と、近年、他のグループが公表した値との間で矛盾が見つかった。本研究の最終目標である、ハロゲンを用いた地球化学の学術基盤の確立、及び得られたデータを体系化し、地球上の物質におけるハロゲンの分布を知るということの達成には、上記の矛盾の解明は不可欠である。従って、本年度は、RNAAを用いて、USGSが発行している17個の標準岩石試料について、ハロゲンの複数回の再分析を行った。それに加え、上述のグループがハロゲンの値を公表している別の標準試料についてもRNAAを用いて分析を行い、その結果を比較検討する。現在、一部、解析が続いており、上記の矛盾について、原因を究明中である。

今後の研究の推進方策

まず、「8.現在までの進捗状況」の文末に記した、解析を終了し、矛盾の原因を解明する。そして、RNAAを用いて、IAEA及びフランスの研究所が発行している標準物質について、ハロゲンを定量し、同元素を用いた地球化学的な考察を進める。その後、粉末化したシェール岩石のハロゲンの分析に着手し、ヨウ素の濃縮をシェール岩石中の化学的特徴として確立する。本研究で行う固体試料中の微量ハロゲンの定量分析は他の分析手段では非常に難しく、かつ、データの信頼性の点でRNAAに勝る方法はない。また、同様の試料に対し、ヒ素、セレンを中心にハロゲン以外の元素分析を行う。ヒ素、セレンは米国地質調査所の地球化学データベースにおいてシェール岩石中での濃縮の可能性が示唆されている。これらの元素の分析は、機器中性子放射化分析法(INAA)により行われる。
INAAを用いると、上記元素を含む33元素を定量することが可能である。ここで確認される、ヨウ素以外の元素の濃縮も、シェール岩石の化学的特徴として確立する。
上記を進めることにより、シェール岩石中でその濃縮が確立された元素及びその定量値と、従来シェール岩石に施されてきた調査により得られている物理データ(岩石の空隙率、透水係数、フラクチャリングの際に用いる流体に対する割れやすさ等)との間に、明確な相関を見出し、生産効率が高いスイートスポットを探索する新原理の構築を目指す。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2022 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Creation of Mo/Tc@C<sub>60</sub> and Au@C<sub>60</sub> and molecular-dynamics simulations2021

    • 著者名/発表者名
      Ohtsuki Tsutomu、Manjanath Aaditya、Ohno Kaoru、Inagaki Makoto、Sekimoto Shun、Kawazoe Yoshiyuki
    • 雑誌名

      RSC Advances

      巻: 11 ページ: 19666~19672

    • DOI

      10.1039/d0ra10196f

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Teshima pyroclastics: Onset of characteristic Setouchi magmatism induced by slab melting at 14.8 Ma2020

    • 著者名/発表者名
      Nakaoka Reina、Kado Soko、Hasegawa Shuichi、Suzuki‐Kamata Keiko、Ishizuka Osamu、Sekimoto Shun、Kawabata Hiroshi、Tatsumi Yoshiyuki
    • 雑誌名

      Island Arc

      巻: 30 ページ: e12378

    • DOI

      10.1111/iar.12378

    • 査読あり
  • [学会発表] Isotopic compositions of noble gases and nitrogen in the Ryugu samples returned by Hyabusa22022

    • 著者名/発表者名
      R. Okazaki et al.,
    • 学会等名
      53rd Lunar and Planetary Science Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] Hayabusa2 returned samples: Unique and pristine record of solar system materials from asteroid Ryugu2022

    • 著者名/発表者名
      M Ito et al.,
    • 学会等名
      53rd Lunar and Planetary Science Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] 福島原発事故に由来する不溶性放射性微粒子の模擬生成実験2022

    • 著者名/発表者名
      稲垣誠、関本俊、高宮幸一、沖雄一、大槻勤
    • 学会等名
      第23回「環境放射能」研究会
  • [学会発表] 電子線形加速器を利用したAc-225製造スケールアップ試験 (1)Ra-226 試料作製及び制動放射線照射試験2021

    • 著者名/発表者名
      田所 孝広、前田 瑞穂、西田 賢人、上野 雄一郎、可児 祐子、渡辺 敬仁、伊藤 雅春、佐々木 貴裕、菊永 英寿、柏木 茂、白崎 謙次、大槻 勤、関本 俊、稲垣 誠
    • 学会等名
      日本原子力学会 2021年秋の大会
  • [学会発表] 電子線形加速器を利用したAc-225製造スケールアップ試験 (2)Ac-225の分離精製及び定量評価2021

    • 著者名/発表者名
      前田 瑞穂、 田所 孝広、西田 賢人、上野 雄一郎、可児 祐子、渡辺 敬仁、伊藤 雅春、佐々木 貴裕、菊永 英寿、柏木 茂、白崎 謙次、大槻 勤、関本 俊、稲垣 誠
    • 学会等名
      日本原子力学会 2021年秋の大会
  • [学会発表] 福島原発事故に由来する不溶性微粒子のレーザー加熱法による模擬生成実験2021

    • 著者名/発表者名
      稲垣誠、関本俊、高宮幸一、沖雄一、大槻勤
    • 学会等名
      日本放射化学会第65回討論会(2021)

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公開日: 2022-12-28  

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