研究課題/領域番号 |
18H01313
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
亀井 淳志 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (60379691)
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研究分担者 |
堀江 憲路 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (00571093)
馬場 壮太郎 琉球大学, 教育学部, 教授 (10347122)
中野 伸彦 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (20452790)
大和田 正明 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (50213905)
外田 智千 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (60370095)
遠藤 俊祐 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (60738326)
小山内 康人 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (80183771)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超大陸 / 変花崗岩 / リュツォ・ホルム岩体 / 南極 / 原生代 |
研究実績の概要 |
原生代に始まる超大陸の形成はSclavia/Superia (2.5Ga~),Nuna/Columbia (1.8Ga~),Rodinia (1.0Ga~),Pan-African supercontinent (6.0Ga~)と繰り返され,気圏・水圏の大規模循環や生命体活動にも影響した重要イベントである.最近,東南極リュツォ・ホルム岩体(全長約450km)の変花崗岩類から25~10億年が報告され始めた.本課題ではこれらの成因論と年代論を基にして本地域における原生代テクトニクスの解明を目指す.またその結果に基づきながら地球規模の超大陸変遷史の解明に向けた議論を行う. 二年次ではリュツォ・ホルム岩体の全域を対象に2017年度調査で採取した変花崗岩試料の岩相変化の把握,産状記載のまとめ,顕微鏡記載,蛍光X線分析装置(XRF)による主・微量成分分析を目指した.記載については全試料(309試料)で終了し,XRF分析は8割がた終了した.これらのデータに基づく花崗岩岩石学的な特徴の類似性および産地を基準にしてグルーピングを実施した.また,XRF分析値をもとにして,成熟した火山弧タイプ,未成熟火山弧タイプ,大陸衝突帯タイプ,そして海洋地殻起源タイプに区分できた.これにより,リュツォ・ホルム岩体について既存研究にはない複雑な地質学的背景が浮き彫りとなった.これらは同時多発的に一カ所で起こるような火成活動ではなく,それぞれが異なる地域や異なる時代で個々に形成され,これが大陸衝突によって寄せ集められたことを強く示唆する.また,海洋地殻起源タイプのものは,これまでの報告では「日の出岬」と呼ばれる露岩に特有のものと解釈されてきたが,同様の岩石が広範囲に点在する様相が判明した.このことから,リュツォ・ホルム岩体の原岩形成に関してより詳細なモデルの再構築が必要という事が明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究二年次までの取り組みにより,東南極リュツォ・ホルム岩体の全域においてマグマ生成場が異なる種々の変花崗岩類の混在が見えてきた.これは初年次に本岩体の6露岩の検討から予測されたことが明確となった形であるが,予想を超えた複雑な地質学的背景の存在を認識しつつある. 研究二年次で本岩体の変花崗岩類から認識できた特に重要な火成活動は,①成熟した火山弧活動,②未成熟火山弧活動,③大陸衝突帯型活動,そして④海洋地殻融解を伴う活動の4種類である.これらは岩体内に普遍的に散在しており,偏りはない.既存研究では,変成作用の解析から,とくにパンアフリカン期の広域変成作用で東部に角閃岩相変成岩類が,そして西部でグラニュライト相変成岩類が分布する相違が認識されていた.しかし,今回は,その現岩に東西変化が大きくないことが認識された.ただし,各露岩で細かく見れば,海洋地殻起源の花崗岩が多い露岩や,大陸衝突型の花崗岩が多い露岩など様々である.このような新知見が積み重ねられており,順調に進捗していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
現在は,(1)野外での岩相・貫入形態・包有岩などの特徴,(2)顕微鏡下における鉱物組み合わせ・組織の特徴,(3)蛍光X線分析装置(XRF)による主・微量成分の特徴をおさえ,研究に必要不可欠な記載・分類と化学判別図解析を終えた所である.この先の希土類元素分析や同位体分析で具体的な成因解析が進めば,変花崗岩類の火成活動に関する詳細を解明できると考えている. 三年次目では,各露岩で見えた①成熟した火山弧タイプ,②未成熟火山弧タイプ,③大陸衝突帯タイプ,そして④海洋地殻起源タイプの変花崗岩類について,ICP-MSによる微量元素組成解析,およびTIMSを用いたSr/Nd同位体組成解析を行い,それぞれの起源物質やマグマの生成過程を検討する.成因論では,地球化学的判別図の解析のみでは誤認が生じる可能性もある.そこで①結晶過程,②マグマ混合と母岩の同化作用,③初性マグマの生成過程(特に起源物質と融解条件)を微量元素や同位体組成で解析する必要がある.これにより,各花崗岩マグマ活動を明確にでき,またそのテクトニクス背景を解明できる. またそれ以降では,成因が解明された変花崗岩類の年代測定を要する.島根大学のLA-ICP-MS装置の改造は完了しており,分析手法の確立に向けた作業も三年次より開始する.変花崗岩類の成因論と年代論の組み合わせによりリュツォ・ホルム岩体に記録された原生代火成活動史の解明が実現する.このことで,Sclavia/Superia (2.5Ga~),Nuna/Columbia (1.8Ga~),Rodinia (1.0Ga~),Pan-African supercontinent (6.0Ga~)における超大陸形成期のリュツォ・ホルム岩体の地質学的位置付けを明確にでき,地球規模での超大陸変遷史に向けた議論を構築できる.したがって,四年次は年代測定が研究の中心になると考えている.
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