研究課題/領域番号 |
18H01314
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
辻野 典秀 岡山大学, 惑星物質研究所, 助教 (20633093)
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研究分担者 |
芳野 極 岡山大学, 惑星物質研究所, 教授 (30423338)
山崎 大輔 岡山大学, 惑星物質研究所, 准教授 (90346693)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マントル鉱物 / 水素位置 / 単結晶 / FTIR / 相対粘性率 |
研究実績の概要 |
水がカンラン石のレオロジーに大きな影響を与えることが示されてから、30年以上にわたってマントル鉱物のレオロジーへの水の効果は多くの研究者によって調べられてきている。しかしながら、報告された結果には一貫性がなく、マントルダイナミクスへの水の効果を定量的に応用する段階にないのが現状である。その主な原因は、ほとんどの研究で全含水量をパラメータとした議論に限定されてきたため、マントル鉱物のレオロジーに対する水素の結晶学的配置の影響が全く考慮されてこなかった点にあると考えられる。また、遷移層・下部マントルに至っては、レオロジーに関する研究が限られており、水の影響を議論するに至っていない。本研究は、FTIRで観測されるいくつかのOH伸縮バンドがそれぞれの水素位置を反映していることに着目して、上部マントルから下部マントルまでの主要鉱物について水素位置を特定し、レオロジーに与える水の影響を結晶学的に解明することを目的とする。 2020年度は第一に、下部マントルまでの高圧マントル鉱物の大型(mm級)単結晶合成技術の確立とダイヤモンドアンビルセルでの高圧下での鉄を含むブリッジマナイト単結晶のIR測定を行った。その結果本研究で合成された鉄及び約20wt.ppmの水を含むブリッジマナイトは、OHバンド(3390/cm)はb軸方向に配向していること、そのOHバンドの圧力依存性はウォズレアイトの低波数側のOHバンド(3340/cm)とほぼ同程度であることが明らかとなった。さらに、レオロジーに与える水の影響を明らかにするために、カンラン石と斜方輝石間の相対粘性率差を明らかにするための変形実験技術の基礎の構築と乾燥状態での相対粘性率差の測定を行った。その結果、最近報告されている斜方輝石とカンラン石の粘性率測定結果とは異なり、斜方輝石がカンラン石に比べ優位に硬いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、下部マントルまでのマントル鉱物の大型(mm級)単結晶合成技術の確立を行った。これにより、本研究の最大の課題である単結晶の方位ごとのIRスペクトルの圧力依存性を下部マントル鉱物に至るまで明らかにすることが可能となった。 また、これまでは、下部マントル条件に注目した変形実験技術の確立に重きを置きていたが、本年度では低圧条件での実験が可能となるように、高圧セルの大容量化・最適化を行うことでカンラン石・斜方輝石間の乾燥条件での相対粘性率差を明らかにした。今後この技術を用いて、異なる水雰囲気下で実験を行うことで水の与えるレオロジーの影響を明らかにできることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度になる2021年度ではこれまでに確立した単結晶合成技術、高圧・低温条件下でのIR測定技術、高圧下でのレオロジー測定技術を総動員して単結晶マントル鉱物中のOHバンドの温度・圧力・方位依存性の測定による水素位置の特定と水の与えるレオロジーの影響を明らかにしていく予定である。
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