研究課題
当該年度は、大型放射光施設SPring-8において超高圧高温変形実験によるマントル遷移層鉱物(ウォズリアイトとリングウッダイト)の粘性率測定を行った。さらに広島大学大学院理学研究科にマルチアンビル型高温高圧発生装置を導入した。超高圧高温変形実験によるマントル遷移層鉱物の粘性率測定実験は、SPring-8のビームラインBL04B1においてD-DIA型変形装置を用いて、2019年5月16日から18日と6月29日から7月1日(2019年度前期)および10月5日から8日と2020年2月8日から11日(2018年度後期)に計16回行った。これにより、マントル遷移層鉱物の粘性率測定実験に計10回成功した。2020年3月には学習院大学から広島大学大学院理学研究科へマルチアンビル型高温高圧発生装置を移設した。本研究課題では、超高圧高温変形実験の出発試料としてマントル遷移層鉱物の多結晶体を用いることを計画している。移設した装置を用いることにより、高温高圧下においてマントル遷移層鉱物の多結晶体を合成することが可能になる。今後は、温度・歪速度・含水量条件を拡大してマントル遷移層鉱物の粘性率を測定する。また、走査型電子顕微鏡を用いて回収試料の粒径・粒界形状を測定・観察し、透過型電子顕微鏡を用いて転位組織を観察し、顕微赤外分光法により含水量を定量する。これらにより、マントル遷移層の粘性率の主要構成鉱物(圧力)・温度・歪速度・含水量依存性を明らかにする。
2: おおむね順調に進展している
2年度目であった当該年度の目標は、(1)超高圧高温変形実験によるマントル遷移層鉱物の粘性率測定を行うことと、(2)広島大学大学院理学研究科にマルチアンビル型高温高圧発生装置を導入することであった。このため、超高圧高温変形実験によるマントル遷移層鉱物の粘性率測定に取り組んだ。実験は計16回行い、成功実験は10回であった。本実験は高温高圧変形実験としては発生圧力が高いために、失敗実験の頻度が高い。これは、当初の計画通りである。2020年3月には学習院大学から広島大学大学院理学研究科へマルチアンビル型高温高圧発生装置を移設した。移設時にトラブルはなく、移設は当初の計画通りに完了した。当該年度に当初予期していなかった深刻な問題は起きていない。2020年3月の高温高圧発生装置の移設では、新型コロナウイルス感染症に対して十分に対策した。以上のことより、本研究課題は当初の計画通り「おおむね順調に進展している」と評価できる。
今後は、(1)超高圧高温変形実験によるマントル遷移層鉱物の粘性率測定を継続して行い、(2)実験回収試料の分析を進め、(3)得られた研究成果を学会・国際学術雑誌で発表する。当該年度に引き続き、超高圧高温変形実験によるマントル遷移層鉱物の粘性率測定を行う。2020年度前期の実験課題は、SPring-8により採択されている。しかし、新型コロナウイルス感染症対策によりユーザー利用が停止となった。ユーザー利用の再開後には、粘性率データをより広い温度・歪速度・含水量条件で得るために実験を行う。同時に実験回収試料の分析も進める。走査型電子顕微鏡を用いて回収試料の粒径・粒界形状を測定・観察し、透過型電子顕微鏡を用いて転位組織を観察し、顕微赤外分光法により含水量を定量する。現在、新型コロナウイルス感染症対策により研究活動と出張を自粛している。このため、実験回収試料の分析は自粛要請の解除後に行う。これらによりマントル遷移層の粘性率の主要構成鉱物(圧力)・温度・歪速度・含水量依存性を明らかにする。得られた研究成果を学会で発表するとともに、論文原稿を執筆し、国際学術雑誌へ投稿する。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 6件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 9件) 備考 (3件)
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