研究課題
昨年度までに,レーザーアブレーションマルチコレクタ誘導結合プラズマ質量分析計(LA-MC-ICP-MS)をもちいて,レーザー径25ミクロンでのモナズ石の局所Nd同位体比分析を行うことが可能となった.また,分析手法の精査を繰り返すことで,その誤差は表面電離型質量分析計 (TIMS)を用いたNd同位体比の誤差と同程度まで精度を上げることに成功した.加えて,天然の花崗岩類から分離したモナズ石のNd同位体比初生値が,花崗岩の全岩Nd同位体比初生値とほぼ同様の値をしめすことが確認された.つまり,ジルコンのU-Pb年代とHf同位体比を目的としたジルコン分離の際に,ジルコンとともに濃集するモナズ石のNd同位体比を測定することで,非常に簡便にマルチ同位体比を用いた成因の議論が可能となることが検証できた.また,アパタイトのSr同位体比分析については分析手法の改良を行い,標準試料アパタイトに関しては,65ミクロン径を用いて非常に高精度な測定(±0.00003程度)が可能となった.しかしながら天然の花崗岩類中のアパタイトは,斜長石などの他のSrを多く含む鉱物と共生するため,Sr含有量が著しく低い.そのためこの精度での分析が困難であることが判明したため,今年度さらなる改良が必要である.以上の結果から,今年度までにジルコン・モナズ石・アパタイトの重鉱物分離~マウント~SEM/BSE/CL像での観察~同位体分析までの一連のルーチンをおおよそ確立したといえる.これらの成果に加えて,今後分析を予定する地域を含めた国内外の様々な地質体についての成果をまとめ,国内・国際誌に発表するとともに,最新データについては多くの国内外での学会やシンポジウムで発表した.
2: おおむね順調に進展している
当初予定通り,モナズ石のNd同位体比分析を含めたマルチ同位体比分析のルーチンを確立したため.
昨年度から行っているアパタイトのSr同位体比の測定手法の改良によって,測定精度は大幅に向上したが,1点ごとの測定誤差はまだ大きい.砕屑性ジルコンのように1粒子ごと(1点ごと)に評価が必要な分析では,さらなる精度の向上を図る必要があり,既に複数の天然の花崗岩試料から分離済みのアパタイトを用いて,分析精度の向上を行う.それに加えて,既存試料を用いた砕屑性ジルコンやモナズ石の分析を行う.これらの分析の過程で,必要に応じ分離した試料のTIMS分析を行い,LA-MC-ICP-MSとのデータの整合性のチェックを行う.対象試料はこれまでの研究で採取したベトナム,モンゴル,および三郡帯等の試料であり,アジアを特徴づける約450 Maの砕屑性ジルコンを含む地質体をターゲットとする.これらの地域の砕屑性岩を対象として,ジルコン,モナズ石の年代頻度とジルコン,モナズ石,アパタイトから得られた各同位体比初生値を関連づけ,Hf・Nd・Sr同位体比初生値から砕屑性物の起源を精密分類することを目指す.また,これらのマルチ同位体比を用いた東西ゴンドワナ大陸の復元を目的として,本年度第62次日本南極地域観測隊として,南極・リュッツォホルム湾周辺での調査および試料採取を行う予定である.
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 1件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (25件)
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