研究課題/領域番号 |
18H01318
|
研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
岡崎 啓史 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 研究員 (90784257)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 岩石レオロジー / 沈み込み帯 / 変成岩 / 破壊 / 摩擦 / 流動 / 地震 / 断層 |
研究実績の概要 |
本研究ではプレート境界に存在すると考えられる物質(海洋地殻+マントル)の力学特性が水流体下及びCO2流体下連続的な変成反応によってどのように変化するのか解明するために新規にGriggs型の高温高圧変形試験機(最大圧力2GPa, 最大温度1200degC)を製作してプレート境界構成岩石の高温高圧変形実験を行うことを計画している。現在のところ、計画通りに2018年度に本研究の肝である新しい固体圧高温高圧変形試験機を製作し、2019年度に調整を完了し実験を開始することができた。封圧1000MPa, 温度500degC, 間隙水圧500MPaでサンカルロスオリビンの変形実験をおこなったところ、通常のオリビン(~0.6)より低い摩擦係数(~0.4)が計測された。回収試料のSEM-EDS観察からオリビンと間隙水が反応して緑泥石、蛇紋石、ブルース石などが生成していたことがわかった。緑泥石の生成にはカンラン石にはほとんど含まれていないアルミニウムが必要であるが、変形実験の際にアルミナ (Al2O3)をピストンとして用いたことから試料-水-ピストン間で反応が進んでしまったことが予想される。今後は代替物質をピストンに使用する必要がある。またこの反応が水の注入口から一番遠い場所試料-ピストン境界でも観察されたことから、水は試料中に十分浸透していることが確認できた。この実験は3日以上安定して温度圧力間隙水圧を維持できたことも確認でき、世界初の500MPaを超える高間隙水圧をコントロールした状態での高温高圧変形実験の方法を確立することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、計画通りに2018年度に本研究の肝である新しい固体圧高温高圧変形試験機を製作し、2019年度に調整を完了し実験を開始することができた。実験を定常的に実施できる方法も確立したのでおおむね計画通りに研究が進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度は、岩石レオロジーに対する水の量と水圧の効果について注目し、研究をおこなっていきたい。特に石英とカンラン石を用いた高温高圧高間隙水圧下における岩石変形実験を行う予定である。実験条件は封圧が500ー1500 MPa, 温度が400ー900 degC、間隙水圧 が0ー800 MPaを予定している。水との反応性の低いが水への溶解度は高い石英と、反応性は高いが溶解度は低いカンラン石の結果を比較することにより、岩石レオロジーに対する水ー岩石反応の影響についても考察していきたい。特に水ー岩石反応によって生成される蛇紋石や緑泥石、滑石などの粘土鉱物は、一般的な造岩鉱物に比べて著しく低い摩擦係数を示す。このような反応の効果と水の存在自体が及ぼす岩石強度への影響を分けて調べることに注目している。実験は準備も含めると一実験に一週間以上かかることが予想されるため、15~20実験を計画している。
|