研究課題/領域番号 |
18H01324
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
白井 厚太朗 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70463908)
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研究分担者 |
中島 礼 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (00392639)
棚部 一成 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 名誉教授 (20108640)
窪田 薫 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 特別研究員(PD) (80774075)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 成長線編年額 / 化石 / 気候変動 / ビノスガイ / 安定同位体 |
研究実績の概要 |
気候変動メカニズムの理解や産業革命以後の人為起源の地球温暖化影響を評価するためには,数年から数十年規模の周期で生じる数百年スケールの気候変動を定量的に指標化することが必要不可欠である.本研究は「地球温暖化に伴い数十年周期の気候変動はどのように変化したか?」「過去の地球温暖期において長周期気候変動は存在したか?存在したのであれば,周期や強度は現在と比較してどのように変化していたか?」を明らかにすることを目的とする.長寿二枚貝ビノスガイ殻の成長線解析と地球化学分析に着目し,北西太平洋・オホーツク海における現在から過去数百年にわたる長周期気候変動の指標化,および完新世気候最適期/更新世の間氷期という2つの過去の地球温暖期における長周期気候変動の 変動特性を明らかにする. 2018年度は試料収集と現生ビノスガイの成長線解析を実施した.化石試料については,千葉県立博物館,産業技術総合研究所,茨城県自然博物館などに保管されているビノスガイ化石標本のうち,長寿命だと思われる個体について使用許可を取り標本を借用した.それらの試料について,いくつかは切断・研磨して成長線の観察を行い,続成作用の影響が成長線解析を実施するのに十分無視できる程度に小さいこと,寿命が数十年以上であることなどを確認した.現生試料について岩手県大槌町および北海道の網走を含む複数地点から貝殻試料を入手した.一部は切断・研磨して,数十年以上の長寿命個体を含むことを確認した.これらの試料を2019年度以降に解析することで過去の長周期気候変動に関する知見が得られると期待される. また,大槌の現生ビノスガイについてはマスタークロノロジーの構築と死亡年代の推定を実施した.その結果,マスタークロノロジーは1900年頃まで延伸され,いくつかの個体は津波により死亡したことが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試料収集,成長線解析,マスタークロノロジーの構築,成果発表ともに概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度以降も引き続き,岩手県大槌湾および北海道網走から採取された現生ビノスガイのマスタークロノロジー構築を目指す.それぞれの海域からビノスガイ殻の現生試料および死に殻を採取を行う.これら現生貝殻と死に殻を交差年代決定法より過去に延伸することで,北西太平洋域の数十年規模気候変動を復元し,メカニズムの解明を試みる.各地点について現生試料10個体程度の成長線解析を行い,興味深い結果が得られた試料について酸素炭素安定同位体・微量元素組成などの分析を行い詳細な環境情報を復元する. 完新世気候最適期(約6000年前),更新世の間氷期(酸素同位体ステージ5e,7, 9, 11) などの地球温暖化の良いアナログになる時代に注目し,化石試料の入手を試みる.中~後期更新世の間氷期の試料については,千葉県・茨城県(下総層群),秋田県(鮪川層,潟西層),前期更新世については石川県(大桑層),青森県(浜田層),北海道(瀬棚層)から採取された保存の良い化石試料を念頭に置いている.太平洋側と日本海側の中~後期更新世のほぼ同時期の化石を用いることで,太平洋と日本海が受ける長周期変動による反応の相違という面で当時の日本周辺海域の環境応答についての成果が見込まれる.化石試料については,成長線解析と酸素炭素安定同位体・微量元素組成分析の両方を行う.
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