研究課題
東南アジアの古第三紀動物相では多くの固有な分類群が産出するが,アジアの典型的な産地であるモンゴル~内蒙古の化石記録に比べて軽視されてきた。本研究の目的は,東南アジアおよび南部中国の中部始新統~漸新統を中心に産出する陸棲脊椎動物について,産出分類群の記載や系統分類の再検討を行い,地理的・時間的分布と近縁群との系統関係から古生物地理学的過程を考察し,北半球の古第三紀動物相の中での東アジア南部の動物相の特徴を明らかにすることである。標本からのデータ収集は,実物標本の形態観察や計測,写真撮影以外に,作製したキャストやマイクロCT・レーザースキャナーによるデジタル画像も用いて行った。2018年度は,東アジア南部に関係する標本の調査として,ミャンマーの始新統ポンダウン層産出の哺乳類・爬虫類の追加データを宗教文化省考古局で収集し,現地で陸棲脊椎動物産出層であるポンダウン層やイラワジ層についての情報収集を行った。考古局からは職員2名を日本に招聘し,標本の借用と共同研究を行った。ベトナム北部古第三系ナズン炭鉱産出の標本(ベトナム国立自然博物館収蔵予定)を日本に借り出し,形態観察を行った。漸新統~下部中新統の中国産真反芻類の標本観察を,中国科学院古脊椎動物古人類研究所,中国地質博物館,上海自然史博物館,天宇自然博物館,山旺古生物博物館で行った。国立科学博物館の中部始新統ネパールと下部中新統ミャンマーの化石の保管状況の確認と同定を進めた。国立科学博物館と瑞浪市化石博物館所蔵(所蔵予定も含む)の下部中新統の日本産哺乳類について同定と古生物地理学的検討を行った。比較分類群のデータを,モンゴル地質古生物学研究所と国立科学博物館の標本や文献から収集した。成果の一部を,日本古生物学会と和文総説論文として発表し,原著論文が国際学術誌に受理された。
2: おおむね順調に進展している
代表者・分担者ともに,それぞれの担当動物相や担当分類群で,博物館調査やデータ収集および分析を進めている。
東アジア南部の中期始新世~漸新世の陸棲脊椎動物を中心として,博物館所蔵標本や発掘調査標本のデータ収集を継続的に行う。博物館での形態データ収集を既に行った標本について,系統分類の同定を進める。比較分類群については,文献調査と博物館所蔵標本からデータ収集を行う。海外渡航先として,ミャンマー(宗教文化省考古局,国立博物館),タイ(コラート博物館,バンコク地質調査所),ベトナム(地質鉱物局),中国(中国科学院古脊椎動物及古人類研究所),モンゴル(モンゴル科学アカデミー)を予定している。渡航の際に化石産出地の地質学的データの収集も合わせて行う。各担当分類群の産出状況や調査地についての情報交換や系統解析方法の改善のための情報収集のための国内出張を行う。成果を,国内外の学会(日本古生物学会,Society of Vertebrate Paleontologyなど)と論文で発表する。研究組織での分担については,国内研究者については,江木(代表者)が肉食哺乳類,鍔本が大型哺乳類,西岡が小型哺乳類と反芻類,高井が霊長類,對比地が爬虫類を対象分類群として作業を進めていく。他に,海外研究協力者として,これまでの発掘調査での共同研究者(ミャンマーMagway大学のZin-Maung-Maung-Thein博士ほか)が加わる。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (2件)
Palaeontographica Abteilung A: Paläozoologie-Stratigraphie
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化石
巻: 104 ページ: 21-33
巻: 104 ページ: 5-20