研究課題/領域番号 |
18H01327
|
研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
江木 直子 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 協力研究員 (80432334)
|
研究分担者 |
西岡 佑一郎 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 主任研究員 (00722729)
鍔本 武久 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (20522139)
對比地 孝亘 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (70597343)
高井 正成 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (90252535)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 陸棲脊椎動物 / 古第三紀 / 東南アジア / 生物地理 / 系統分類 |
研究実績の概要 |
東南アジアの古第三紀動物相では多くの固有な分類群が産出するが,アジアの典型的な産地であるモンゴル~内蒙古の化石記録に比べて軽視されてきた。本研究の目的は,東南アジアおよび南部中国の中部始新統~漸新統を中心に産出する陸棲脊椎動物について,産出分類群の記載や系統分類の再検討を行い,地理的・時間的分布と近縁群との系統関係から古生物地理学的過程を考察し,北半球の古第三紀動物相の中での東アジア南部の動物相の特徴を明らかにすることである。 標本からのデータ収集は,実物標本の形態観察や計測,写真撮影以外に,作製したキャストやマイクロCT・レーザースキャナーによるデジタル画像も用いて行った。2019年度は,東アジア南部に関係する標本の調査として,ミャンマーの始新統ポンダウン層産出の哺乳類・爬虫類の追加データを宗教文化省考古局で収集し,現地で陸棲脊椎動物産出層であるポンダウン層やイラワジ層についての情報収集を行った。考古局からは職員2名を日本に招聘し,標本の借用と共同研究を行った。ベトナム北部古第三系ナズン炭鉱産出からは,哺乳類の下顎が産出し,標本(ベトナム国立自然博物館収蔵予定)を日本に借り出し,同定を行った。下部中新統瑞浪層(岐阜)のシカ類の記載分類するために初期真反芻類の比較データを,バイエルン州立古生物地質博物館で収集した。 2019年度末に予定していたモンゴル科学アカデミーでの発掘資料の整理およびデータ収集と2020年度に繰り越して行う予定だったアメリカ合衆国スミソニアン機関での比較標本観察は,コロナ感染のため海外渡航できず,その分を国内機関に所蔵されている標本資料調査にあてた。 成果の一部を,日本哺乳類学会と日本霊長類学会で発表し,和文総説を国内学会誌で出版され,英文原著論文2編を国際学術誌で出版した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
代表者・分担者ともに,それぞれの担当動物相や担当分類群で,博物館調査やデータ収集・分析を進めている。 一方で,2020年2月からの新型コロナ感染拡大により,海外渡航禁止,学会中止,国内出張制限,勤務形態変更への対応があり,作業の中止や遅延が起きている。
|
今後の研究の推進方策 |
東アジア南部の中期始新世~漸新世から産出する陸棲脊椎動物を主な対象として,博物館所蔵標本や発掘調査標本のデータ収集を継続的に行ってきた。本研究では,これまで産出国研究機関(ミャンマー,ベトナム,モンゴル)と継続的な調査にもとづく独自の発掘資料による研究を行ってきたが,世界的な新型コロナ感染拡大に伴い,海外渡航を伴う作業の見通しが立たない。また,同定に必要な比較データ収集のための欧米の博物館への訪問も難しくなった。 博物館での形態データ収集を既に行った標本について,引き続き,系統分類の同定を進める。比較分類群については,文献調査と国内資料からデータ収集を行う。国内で行える作業として,CTやレーザースキャナーで撮像した3次元形態データによるより詳細な形態特徴の観察と評価を進める。 成果は,国内外の学会(日本古生物学会,Society of Vertebrate Paleontologyなど)と論文で発表する。 研究組織での分担については,国内研究者については,江木(代表者)が肉食哺乳類,鍔本が大型哺乳類,西岡が小型哺乳類と反芻類,高井が霊長類,對比地が爬虫類を対象分類群として作業を進めていく。他に,海外研究協力者として,これまでの発掘調査での共同研究者(ミャンマーMandalay大学のZin-Maung-Maung-Thein博士ほか)が加わる。
|