研究課題
本科研では、琵琶湖の地史や古生物、現生生物の分子系統解析などの個々の研究を総合化して、琵琶湖の固有種の生い立ちを明らかにすることを目的としている。本年度は研究初年度であり、各研究班ごとの研究を進めると共に、2018年5月と2019年2月に研究集会を開催した。このうち、第1回目の集会では、特に琵琶湖の固有種ならびに琵琶湖の地史や古環境に関するこれまでの研究の到達点を中心に、研究分担者各々が発表を行った。また、第2回目の研究集会では、各班の研究の進捗状況の確認やそれぞれの研究についての情報交換を行ったほか、分担者以外で本研究に関連する研究を行っている外部の研究者を招聘して勉強会も行った。それらは、シジミ類の進化を研究している京都府農林水産技術センターの山田充哉研究員および哺乳類の臼歯のマイクロウエアと食性に関する研究を行っている山梨県立博物館の山田英佑学芸員であった。さらに、第2回研究集会では集会が開催された琵琶湖博物館に蓄積されているボーリングコアならびに現生魚類の液浸標本などの見学を行い、今後の研究の進め方の議論を行った。こうした2回の研究集会の発表を基に、今年度は、琵琶湖の模式的な古地理図および古水系図を試作するとともに、その上に琵琶湖の固有魚類の分岐年代を重ねあわせる試みを行った。今後はこの古水系図をより正確なものにすると共に、個々の研究を深めていくことを行っていく。また、本研究に関係する研究史ならびに文献集を作成する計画も現在進めており、徐々に原稿が集まり始めている。本研究に関係した具体的な成果としては、後述するとおり、研究代表者や研究分担者が公表した論文は6件、学会発表等は8件ある。
2: おおむね順調に進展している
本年度は研究の1年目であり、これまでの研究の到達点をまとめることができたことは、おおむね順調に進展していると評価できる。これらの研究史と文献集について、学術雑誌に投稿できるように、準備を行っている。また、古地理班、植生史・古気候班、陸上大型動物班、水棲生物班ともにそれぞれの調査研究を進めており、論文や学会発表を着実に行っている。
古地理班では、1年目に製作した古琵琶湖の古地理図や古水系図をより正確なものとすることをめざす。植生史・古気候班では、琵琶湖地域で産出する大型植物化石および花粉化石の分析を引き続き行い、古琵琶湖層群に記録されたローカルな気候変化を探る。陸上大型動物班は、古琵琶湖層群から産出しているゾウやシカの臼歯化石を用い、そのマイクロウエア解析を行うことで、古植生の変化を概観する。水棲生物班は、現生の魚類および貝類をRAD-seq法を用いることで他地域の集団との遺伝的交流の履歴を高精度で推定する。また、古琵琶湖層群からの魚類咽頭歯化石を分析し、属レベルでの魚の動態を探る。こうした研究を推進するために、滋賀県内で多賀町博物館が中心になって行っている古琵琶湖層群蒲生層(約190~180万年前)の発掘調査の成果や琵琶湖博物館の市民研究組織による化石くクリーニングなどの援助を受け、作業を加速化させる。また、第2回研究集会に参加し、講演をしてもらった2名の研究者(山田英輔氏および山田充哉氏)に研究協力者として加わってもらい、今後の研究の充実を図る。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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