本研究では、耐熱複合材料の高温環境における健全性を高い信頼性で診断することを目的とし、高温状態でも超音波ガイド波の伝播挙動を可視化できるシステムを構築するとともに、複合材の内部損傷がガイド波伝播挙動に及ぼす影響を明らかにする。 2020年度には、センサ部を遠隔設置では無く高温環境にダイレクトに設置するために導入した再生PSFBGについて、その高感度化を図るため、理論解析シミュレーションによってセンサパラメータの適切な設定方針を調査した。そこで2021年度は、その適切なパラメータ設定に基づいて実際に再生PSFBGセンサを試作した。その結果、再生PSFBGのスペクトル形状は大きく改善され、超音波受信感度が劇的に向上していることが確認できた。これにより、高い耐熱性を有しながら極めて高感度な光ファイバ超音波センサを構築することができた。さらに、本手法の大型複合材構造物への適用を実現するため、1本の光ファイバに複数の再生PSFBGセンサを形成することで、超音波伝播の可視化が可能な領域を大幅に拡大することも試みた。実際に、3点のセンサ部を1本の光ファイバ上に形成し、それらのセンサを1m四方のアルミ板に分散設置して計測を行った結果、1セットのシステムのみで、そのアルミ板の3/4の領域における超音波伝播挙動を可視化することができた。 また、超音波可視化動画から複合材の内部損傷を診断するためには、複合材を伝播するガイド波に含まれる複数モードを個別のモードに分離して、損傷部でのモード変換挙動を捉える方法が有効と考えられる。そこで、三次元フーリエ変換により超音波可視化動画上に存在する複数モードを個別に分離する手法を構築し、モード変換挙動の観察を行ったところ、CFRP積層板中の層間剥離や、クラック単体を検出することに成功した。
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