研究課題/領域番号 |
18H01335
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
磯野 吉正 神戸大学, 工学研究科, 教授 (20257819)
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研究分担者 |
菅野 公二 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (20372568)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 半導体ナノ細線 / 弾性歪み / 表面電位 |
研究実績の概要 |
当申請の研究目的は、ボトムアップ成長シリコンカーバイト(SiC)ナノワイヤを検出素子とした超小型機械量センサの実現を目指して、『MEMSナノ引張試験デバイス』および『FET型ナノ曲げ試験デバイス』を新開発し、SiCナノワイヤの力学特性、ならびに弾性歪みと表面電位の相互作用が電気伝導特性に及ぼす影響を解明することである。具体的には、新たに原子スケール絶縁層で被覆したSiCナノワイヤを含有する上記2種類のナノワイヤ物性評価専用MEMSデバイスを新開発し、絶縁層を介したワイヤ表面電位の制御の下で、SiCナノワイヤの力学特性と弾性歪み誘起電気伝導特性を同時かつ高精度に評価する。 研究の第二年度は、① 『FET型ナノ曲げ試験デバイス』を用いた四点曲げ試験治具の開発と顕微ラマン分光装置下での歪み計測手法の確立、②『MEMSナノ引張試験デバイス』を用いたSiCNWsの力学特性評価と弾性歪み誘起電気伝導特性評価、を予定していた。①については、当初の予定に反して、ナノ細線含有試験デバイスの主要部材であるSi基板からのラマン光の影響により、ナノ細線単独でのラマン光歪み計測が困難なことが判明した。そこで、有限要素法を用いて、デバイスの最大曲げ変位からナノ細線単体に生じる軸方向弾性歪みを算出することとした。一方、②については、『MEMSナノ引張試験デバイス』の作製には成功したものの、50nm以下のナノ細線をSEM内ナノマニピュレーションシステムにてデバイス上に集積することが困難であった。このため、①の『FET型ナノ曲げ試験デバイス』の利用に焦点を絞り、弾性歪み誘起電気伝導特性評価を実施した。 無歪み状態での電気伝導性評価の結果、絶縁層の種類(SiO2、Al2O3)によってキャリア移動度に差異が生じることが明らかとなった。次年度では、絶縁層に電位を印加した状況下で、弾性歪み誘起電気伝導特性を解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラマン分光法による細線歪み計測法の確立過程で、当初の想定に反し、ナノ細線含有試験デバイスの主要部材であるSi基板からのラマン光の影響により、ナノ細線単独でのラマン光計測が困難なことが判明した。このため、四点曲げ試験装置の設計・試作、ナノ細線含有試験デバイスの設計・試作を再度実施したが、Si基板からのラマン散乱光の影響を除去しきることはできず、SiCナノ細線のみのラマン散乱光を抽出することは困難となった。対応策として、本研究では、有限要素法を用いて、デバイスの最大曲げ変位からナノ細線単体に生じる軸方向弾性歪みを算出することとした。 一方、『MEMSナノ引張試験デバイス』の作製には成功したものの、50nm以下のナノ細線をSEM内ナノマニピュレーションシステムにてデバイス上に集積することが困難であった。このため、『FET型ナノ曲げ試験デバイス』の利用に焦点を絞り、今後の実験を進めることとする。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、第一年度で作製した『FET型ナノ曲げ試験デバイス』の利用に絞って弾性歪み誘起電気伝導特性評価を実施する予定である。また、2種類の絶縁誘電体(Al2O3、SiO2)にゲート電圧を印加しながら、弾性歪み誘起電気伝導特性を調べ、表面電位が弾性歪み誘起電気伝導特性に及ぼす影響を解明する。ここで、歪み誘起電気伝導特性の極性が反転するようであれば、界面近傍での電子状態密度の変化(蓄積層、反転層)を無視できないことが実証されることとなる。
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