研究課題/領域番号 |
18H01339
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
眞山 剛 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (40333629)
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研究分担者 |
峯 洋二 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (90372755)
諸岡 聡 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究副主幹 (10534422)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 結晶塑性解析 / 複相構造用合金 / マイクロ材料試験 / 格子ひずみ解析 / 有限要素法 |
研究実績の概要 |
2018年度は,(i)複相合金の不均一な弾塑性変形解析を実施するための数値解析環境の構築,(ii)複相合金の構成相である単相材のマイクロ材料試験,およびその実験結果に対応する変形解析,(iii)複相材を対象とする格子ひずみ解析手法の基礎構築,(iv)適用性検証に向けた実験環境整備を実施した.各項目の具体的な研究実績は下記のとおりである. 【変形解析手法構築】研究代表者がこれまでに構築してきた結晶塑性有限要素法を,より複雑な微視構造を持つ複相合金に適用するため,汎用的プリプロセッサを利用した解析モデル生成環境を構築した.また,弾塑性解析精度向上を目的として,微視構造パラメータを含む転位密度依存型モデルを加工硬化則として解析手法に導入した. 【マイクロ材料試験】複相マグネシウム合金における構成相のマイクロ材料試験を研究分担者と共同で実施し,変形挙動の負荷方位依存性を実験的に調査した.さらにマイクロ材料試験に対応する結晶塑性有限要素解析を実施し,構成相の単結晶パラメータを同定すると共に構成相単体としての変形機構を明らかにした. 【格子ひずみ解析】結晶塑性有限要素法による複相材のための格子ひずみ解析手法を構築すると共に,系統的な数値解析を実施して格子ひずみ発達機構を把握した.特に異方性の異なる二相材における格子ひずみ発達機構に関して詳細に調査した.また,中性子線を利用したその場回折実験を研究分担者と共同で実施し,数値解析手法をより実際の実験条件と整合したものに改良した. 【適用性検証のための実験環境整備】本研究で構築する単結晶パラメータ同定手法の妥当性を検証するため,硬さ試験機を用いた不均一変形評価のための実験環境を整備した.具体的には装置の導入と共に,複相合金に対する系統的な調査のための予備試験を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記「研究実績の概要」欄に記載したとおり,当初計画を着実に達成したことに加えて,共同研究者との連携により,その場中性子回折試験を実施し,複相マグネシウム合金における格子ひずみ発達を実験的に得ることができた.自らその場中性子回折試験に参加することにより,実験データ処理の具体的プロセスを修得できただけではなく,本研究計画立案時には想定していなかった解析と実験の連携に関するアイディアを得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は(i)変形解析手法の構築,(ii)マイクロ材料試験,(iii)格子ひずみ解析,(iv)適用性検証の4項目について.下記の具体的内容で研究を推進する. 【変形解析手法構築】複相合金のための解析手法構築を継続すると共に,解析の大規模化・高速化のための手法改善を実施する.また,マイクロ材料試験と格子ひずみ解析の結果を統合的に考慮した汎用的な材料定数同定手法を構築する. 【マイクロ材料試験】複相合金を構成する各相のマイクロ材料試験を研究分担者と共同で実施し,変形挙動の負荷方位依存性を実験的に調査する.さらにマイクロ材料試験に対応した結晶塑性有限要素解析についても引き続き実施し,構成相の単結晶パラメータを同定すると共に構成相単体としての変形機構に関するより詳細な理解を深める. 【格子ひずみ解析】昨年度に研究分担者と共同で実施した中性子その場回折試験結果に対応する結晶塑性解析を実施する.昨年度の実験時に把握した実際の測定方法やデータ処理方法の理解に基づき,格子ひずみ解析で出力する情報を改良すると共に,単調負荷試験の格子ひずみ発達を再現するパラメータを探査する.また,昨年度に実施した実験結果からより詳細なデータを抽出するために,研究分担者と共同で精密なピークプロファイル解析を実施する. 【適用性検証のための実験環境整備】昨年度に整備した押込み試験による不均一変形評価設備を活用し,複相材料の系統的な力学特性評価と変形組織観察を実施すると共に,実験と対応する数値解析を実施し,両者を比較することにより,格子ひずみ解析で同定された塑性パラメータの妥当性を検証する.
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