研究課題/領域番号 |
18H01342
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
細井 厚志 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (60424800)
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研究分担者 |
荒尾 与史彦 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (40449335)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 異種接合 / CFRTP / 金属 / ナノ界面 |
研究実績の概要 |
本研究は、酸化・エッチングプロセス制御によって、金属表面にナノ空間構造体を創製し、炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(CFRTP)積層板と金属の新しい異種材料直接接着技術を確立することを目的としている。2019年度は、アルミニウム合金A5052板とCFRTP積層板を直接接合した試験片について、成形時の熱残留応力を考慮したうえで純モードの破壊靭性を評価する手法を新規に構築した。具体的には、混合モード曲げ(MMB)試験においてモードⅠ及びモードⅡを独立して算出できることを応用し、試験片中央に一定の荷重をかけながら双片持ち梁(DCB)試験を行うことで純粋なモードⅠ破壊を生じさせる手法を新規に提案した。理論モデルを構築し、数値シミュレーションによって提案した手法が正しく評価できることを確認した。実験においては接合強度が高い場合にはアルミニウム合金がき裂進展前に塑性変形を生じることがあり、非線形問題への展開が今後の課題として挙げられた。また、最適な表面処理条件の調査のために、官能基にアミノ基、エポキシ基、イソシアネート基をそれぞれ有するシランカップリング剤を用いて接合した試験片に対し引張せん断試験を行い、どのような表面処理が有効か実験的に評価した。さらに、その接合機構を明らかにするために分子シミュレーションを実施した。結果として、イソシアネート基を有するシランカップリング剤を用いることにより高い接合強度を示した。また、分子シミュレーションの結果、シランカップリング剤溶液中の反応経路において最もエネルギの低いウレタン化した構造を確認した。PA6との結合では、シランカップリング剤中のイソシアネートシラン分子とPA6との間に四員環の強固な結合を形成し、これが接合強度の向上に寄与した可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で想定した試験結果が得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究結果から、純モードの破壊靭性を評価するにあたり、高い界面強度によってき裂進展まえにアルミニウム合金が塑性変形し、層間破壊靭性を高く見積もる可能性が示された。そのため破壊靭性評価試験時に、アルミニウム合金を塑性変形させない工夫もしくは、塑性変形することを前提とした非線形破壊力学を基礎とする評価モデルを構築する。また、金属の表面ナノ構造の影響により、接合強度や破壊靭性が大幅に向上することがこれまでの研究により示されている。しかし、そのメカニズムの詳細はまだ明らかにされていない。そこで接合界面のナノ構造をモデル化したうえでき裂進展シミュレーションを実施し、金属表面のナノ構造が接合界面の力学的特性及び、き裂進展特性に及ぼす影響を定量的に明らかにする。さらに、これまでの研究ではCFRTPの母材としてPA6を取り扱ってきたが、耐熱性などを考えるとPEEKを母材としたCFRTPへの用途展開も重要である。しかしPEEKは化学的に安定しており、耐熱温度も高いためPA6に使用したイソシアネートシランを用いることは有効ではない。そこでPEEKに適したシランカップリング剤を新規に合成し、分子シミュレーションを実施する。最終的にマルチスケールで異種接合メカニズムを明らかにし、高い接合強度を有するCFRTPと金属の異種接合技術を確立する。
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