酸化・エッチングプロセス制御によって金属表面にナノ構造を創製し、炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(CFRTP)積層板と金属の異種材料接合技術を確立することを目的とした。2020年度は、界面ナノ構造の影響によって破壊靭性が大幅に向上する要因解明と異種接合体の熱残留応力除去について、実験及び数値シミュレーションを実施した。界面ナノ構造を有することで接合界面近傍の母材樹脂が脆性破壊から延性破壊に変化して破壊靭性が大幅に上昇することが明らかとなった。この原因を究明するためにGurson-Tvergaard-Needlemanモデルを応用し、き裂進展シミュレーションを実施した。その結果、ナノ構造を有することによって平面応力状態と近い破壊形態を示すことが明らかになった。これはナノ構造によってき裂先端近傍の応力三軸度が低下していることが要因であると示唆された。また、CFRTPとアルミニウム合金の直接接合において生じる熱残留応力をPost-Stretchにより金属側に残留ひずみを与えて低減した際の層間破壊靭性に及ぼす影響を評価した。Post-Stretchを施すことによって試験片長手方向の熱残留応力は82%低減させることに成功した。また試験片幅方向の熱残留応力においてもポアソン効果の影響で66%低減した。Post-Stretchにおける機械的特性の変化を評価するためにDouble Cantilever Beam試験を実施し、モードI破壊靭性を評価した。2019年度に提案した純モードI破壊靭性評価手法の結果と比較すると、約20%程度高い値を示した。Post-Stretchは予き裂導入前に実施していることから、この上昇はき裂前縁の塑性変形の影響ではなく、Post-Stretch処理を施したことによる界面ナノ構造近傍の塑性変形や、熱残留応力が完全に除去されていないことが要因として考えられた。
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