研究課題/領域番号 |
18H01343
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
藤井 透 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (20156821)
|
研究分担者 |
大窪 和也 同志社大学, 理工学部, 教授 (60319465)
小武内 清貴 同志社大学, 理工学部, 准教授 (30614367)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | サブミクロンガラス繊維 / 炭素繊維 / 短繊維 / FRTP / ポロプロピレン / 曲げ特性 / 衝撃強度 / 界面強度 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、炭素繊維(CF)強化高分子系複合材料の母材樹脂を物理的に変成し、特にCFRTPの機械的特性を高めるとともに、そのメカニズムを明らかにすることである。母材変性のため、CF径の1/10の微細繊維を母材に少量添加し、均一分散させる。耐熱性、コスト等の観点から、微細繊維にはサブミクロンガラス繊維(sGF)を用いる。本年度は、汎用樹脂:ポリプロピレン(PP)を母材とし、短いCFにより強化されたCFPPを対象に、その基礎特性に及ぼすsGF変性の効果を調べ、以下の結果を得た。 (1)小型混錬押出機、加圧型ニーダを用い、混練条件を適切に選択すれば、sGFをPP中に微量(樹脂重量の0.3~1wt%)均一分散させることができる。この場合、繊維長1~3インチの綿状のsGFを用いる。 (2) 平均径の異なる3種類のsGFを上記(1)により均一分散させたPP(ペレット)を用い、超音波含浸法を用いることによりCFPPテープ((g=30%)を製作できる。これを短冊状に切断、ランダムに重ねて単繊維強化CFPP板を成形した。PPにsGFを少量添加することにより、曲げ強度は顕著に増す。sGF添加により剛性はわずかに(5%程度)増す。また、CFPPの衝撃強度を含め耐衝撃性は向上する。一方、モードⅡ破壊じん性値は低下した。それぞれに対する効果はsGFのサイズ(平均直径)による異なる。 (3) PPにCF繊維束を埋没した試験片の引張り試験により、sGFを微量添加するだけで、繊維束端での応力集中を緩和する効果のあることが分かった。これには、微細繊維のPP母材中での均一分散によるネットワーク構造が寄与していると見らえる。 (4) 母材がPPであっても、sGFの分散により、その応力分散効果に起因して短CFと樹脂との見かけの接着強度が増すとのモデルが見出された。これにより、耐衝撃性の特性が改善されたと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2軸混練押出機および加圧式ニーダにより、混練条件を適切に選べば、比較的大きいアスペクト比でサブミクロン・ガラス繊維をPP中に均一分散できることがわかった。この材料をフィルム状に成形、その上に炭素繊維(束)を一方向に並べ、超音波で含浸させることにより、CFPPテープを試作できた。 CFPPテープを短冊状に切断、これをランダムに並べてホットプレス成形すれば、CFをあまり短くすることなく、ランダム配向下CFを強化材としてCFPP材料を製造できる。本試作は本研究の3年目に予定されていたが、超音波含浸法を新たに取り入れ、計画の早い段階で所望のCFPP材料を開発できたので、実用化の点での大きな障害が取り除かれた。また、メカニズム解明のため、硬化剤を調整することにより熱硬化性エポキシ樹脂と同等の特性を持つ熱可塑性エポキシ樹脂も得られ、両者の比較実験の準備を進められるようになった。これらを通し、微細ガラス繊維による高分子母材の物理変性効果に対する新たなモデルを構築できる可能性が高まった。ただ、熱可塑性のPPでは、CF一本埋没試験片がうまく作れなかったので、この点、今後の課題として残っている。また、PPに加え、PA(ポリアミド)樹脂を使用することとなっていたが、こちらは手付かずだった。しかし、上述のように、PAと同等以上の特性を有する熱可塑性エポキシ樹脂で代替できるで、メカニズム解明の道筋については遅れは生じない。
|
今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】で述べたように、CFPPテープの製造に目途がつき、本研究の成果を実用に供するための大きな技術的課題が取り除かれたので、サブミクロン(ガラス)繊維による熱可塑性樹脂母材の物理的変性の効果を実製品に反映できる道が開かれた。そこで、メカニズム解明と相まって、実用面で研究成果を反映できるように計画の一部前倒しを進める。ただ、「サブミクロン繊維を母材に均一分散させれば、母材樹脂と強化材(炭素繊維)間の見かけのせん断強度/接着強度が増すのかに対する定量的モデルを打ち立てることができていない。そこで、もう一度原点にかえり、熱硬化エポキシ樹脂と熱可塑性エポキシ樹脂を母材とする、全く同様な2種類の炭素繊維強化高分子系複合材料を用い、先の変性効果メカニズムを追求する。
|