研究課題/領域番号 |
18H01366
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
肖 鋒 東京工業大学, 工学院, 教授 (50280912)
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研究分担者 |
山下 晋 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (80586272)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 数値流体力学 / シミュレーション工学 / 圧縮性流れ / 多相流 / 移動境界 |
研究実績の概要 |
2019年度においてBVD法を圧縮性自由界面多相流に適用し,安定かつ高精度な数値計算モデルの構築および検証を中心に研究を展開し,以下の方面に重点をおき,研究を取り組んだ。 ・MUSCL法とTHINC法で構成するBVD法を用いて「5つ方程式」に基づく自由界面を含む二相流の数値モデルを開発した。Mie-Gruneisen状態方程式を利用し,様々な物質を模擬することに成功した。また,自由界面を拡散せず,高精度で捉えるだけでなく,BVD法の数値散逸を抑制する効果から,多スケールに渡って不連続および渦構造も鮮明に解像できた。高次精度解法であるWENO法に比べ,優れた結果が示されている。 ・BVD法の再構築対象変数は,保存変数,プリミティブ変数,特性変数,流束関数にした場合,単相および二相(理想気体)圧縮性流れにおいて検証を行った。プリミティブ変数および特性変数を用いる場合,比較的に良好な結果が得られたが,複雑な状態方程式にも適用できることを考えると,プリミティブ変数におけるBVD法が実用上優れている結論に至った。 ・「6つ方程式」モデルによる相変化を含む数値モデルを開発した。代数型の相変化モデル,または二相の密度および圧力の緩和計算モデルを取り入れることで,蒸発および凝縮などの物理過程に伴う現象を正しく再現できた。 ・自由界面の捕獲法であるVOF法とLevel set法を完全に統一する新しい手法の確立に向けて,検討し始めた。VOF法の体積率関数とLevel set法の符号付き距離関数は,THINC関数の異なる側面として見直せば,THINC再構築関数によって両者を統一的に表現することが可能になる。これについて,今後さらに研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は,予定された研究内容を実施するとともに,VOF法とLevel set法を完全に統一する新しい手法の確立に向けて研究を展開し始めた。これに関する内容は,これまでの自由界面捕獲法の枠組を一新するものであり,圧縮性自由界面多相流の数値解析に限らず,関連分野に大きなインパクトを与えるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
本年度では,MUSCLおよびTHINC法に基づくBVD再構築法を用いた圧縮性自由界面多相流数値モデルを開発した。本モデルは,従来手法に比べ,より安定かつ精確な計算結果が得られることを確かめた。2020年度は,その実用性を高めると共に,本計画に関連する挑戦的な課題においても積極的に展開していく予定である。 ・MUSCL-THINC-BVD法を非構造格子へ拡張する。非構造格子においては,BVの評価またはBVDアルゴリズムは構造格子と根本的に異なるので,これまで構造格子で得られた知見をもとに非構造格子における定式化を提案する。 ・相変化を含むモデルの開発をさらに進める。衝撃波反射などに引き起こされるキャビテーション現象を対象にモデルの検証,改善を行う。 ・THINC関数によるVOF法とLevel set法を完全に統一した自由界面捕獲法の開発を行う。THINC関数のスケーリング変換を用いれば,体積率関数と符号付き距離関数の間直接変換できる。これによって,Level set関数から界面を表す高次多項式を求めると同時に,体積率を制約条件として用いれば,界面を高精度で表現し,また保存性を有する新しい自由界面捕獲法の確立につながる。 ・本研究企画の最終年度において,研究成果を学術論文などにまとめ,積極的に発信する。
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