研究課題/領域番号 |
18H01367
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長田 孝二 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50274501)
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研究分担者 |
渡邉 智昭 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70772292)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 乱流 / 風洞実験 / 数値計算 |
研究実績の概要 |
○高レイノルズ・高マッハ数格子乱流: 昨年度に新規に設置された風洞の基本性能の評価を行い,一様性と主流乱れの大きさを評価した.格子幅50mmの乱流格子を作成し実験を行った.格子幅の100倍程度下流まで計測を行い,過去の実験結果と良好に一致することを確認した.風洞の上下で異なるサイズの格子を用いた無せん断乱流混合層の実験を行った.その結果,混合層領域では準一様等方性乱流領域よりも大きなスケールで強い間欠性が見られた.高マッハ数格子乱流に対してはコード開発と計算が終了した.今後,詳細な解析を行う. ○高マッハ数噴流の乱流/非乱流界面現象: 乱流/非乱流界面近傍の乱流場に及ぼす圧縮性の影響を明らかにした.その結果,マッハ数の増大に連れて界面層厚さが薄くなること等がわかった.また,界面層近傍では無次元散逸定数のレイノルズ数依存性がこれまで報告されている傾向とは全く異なり,非平衡なエネルギー輸送が行われていることがわかった.さらに,三次元流れにおけるTriple Decompositionの定式化とコードの作成を行い,一様等方性乱流に適用した. ○乱流/衝撃波干渉: 風洞実験において,熱線流速計と圧力センサを用いた乱流変動と壁面圧力の同時計測を行い,乱流との干渉による衝撃波の変形に関する解析を行った.その結果,変形の指標となる衝撃波背後圧力変動の分散が乱流マッハ数MTUと衝撃波マッハ数MSの関数としてMTU^2/(MS^2-1)でよく相関できることを明らかにした.また,速度多点計測を行い,乱流の特性長さの一つである積分スケールが衝撃波面の接線方向に増加することを示唆する結果が得られた.数値計算では衝撃波が層流域から乱流塊へ伝播するコードを新たに作成し計算を行った.条件を変えて計算を行い衝撃波と流れ場の可視化を行った結果,衝撃波の変形と崩壊が乱流マッハ数に強く依存する現象であることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,①風洞の基本性能評価,②格子乱流計測,③無せん断混合層計測,④高マッハ数噴流の解析,⑤乱流と衝撃波の干渉に関する風洞実験と数値計算,を行い,④と⑤に関しては論文として結果を公表するに至っている.③に関しては解析手法の確立も含めて興味深い新しい結果も得られたものの,テストセクション中央部で厳密な無せん断ではなかったため,格子の設計変更を行い,同様の実験を再度行う予定である.しかし,実験手法と解析手法は確立したのですぐに結果が得られることが期待される.以上を鑑み,現在までに研究はおおむね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究は計画通りほぼ順調に行うことができたため,今後も継続的に研究を発展させる.具体的には, ①静的格子幅の変更により終末減衰過程の計測を行う.動的格子システムを設計製作し,高レイノルズ格子乱流中の乱流の非平衡性を明らかにする.また,動的格子を用いて無せん断混合層をつくり(テストセクション上半分に動的格子,下半分に静的格子を用いる),初年度に調べた低いレイノルズ数との比較を行う.特に乱流の非平衡性がどのように異なるかを調査する. ②初年度に開発した三次元流れにおけるTriple Decompositionを高マッハ数噴流に適用し,噴流の渦構造がマッハ数によってどのように変化するのか,また,圧力波の生成と伝播にどのように関連しているのか,等を明らかにする.実験においてはピストン駆動式シンセティックジェットで生成される超音速噴流の特性を粒子画像流速計(PIV)を用いて調査する. ③風洞実験においては,熱線流速計と圧力センサを用いた乱流変動と壁面圧力の同時計測により,乱流との干渉による衝撃波の変形や崩壊現象を引き続き詳細に調査する.特に,乱流によって衝撃波が変形するメカニズムの解明とそのスケーリング則を明らかにする.数値計算においては衝撃波が層流域から乱流域に伝播する計算コードの開発と計算が終了し,可視化を行った段階である.今後は衝撃波の変形と乱流場の詳細な解析を行い,定量的な考察を行う.
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