研究課題/領域番号 |
18H01376
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鹿園 直毅 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (30345087)
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研究分担者 |
谷口 淳 東京理科大学, 基礎工学部電子応用工学科, 教授 (40318225)
佐藤 和好 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (40437299)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 燃料電池 |
研究実績の概要 |
固体酸化物形燃料電池(SOFC)の燃料極材料として,Ni-YSZ(ニッケル-イットリア安定化ジルコニア)のコンポジット材料が広く用いられているが,ニッケルへの炭素析出や硫黄被毒,酸化還元サイクル下でのNiの粗大化等,電極が劣化し易いことが報告されている.長期耐久性を向上させるために,ニッケルを用いないニッケルフリー燃料極が研究されているが,ニッケルの代替材料としてLaxSr1-xCryMn1-yO3-δ(LSCM)に代表されるペロブスカイト化合物が注目されている.炭素析出や硫黄被毒耐性だけでなく,酸化還元サイクル下での安定性も報告されている.ただし,LSCMの課題として,イオン伝導性が小さいことや電極触媒活性が低いことが挙げられる.本研究では,電気化学性能及び微細構造パラメータに着目し,LSCM燃料極の設計指針を得ることを目的に,イオン伝導体であるGdxCe1-xO3-δ(GDC)とコンポジット化したLSCM-GDC燃料極を対象とした実験を行った.本年度も,昨年度に引き続きLSCM-GDC燃料極の焼結温度,燃料極厚みや混合割合等の設計パラメータについて評価を実施した.その結果,LSCMとGDCの粒径を小さくすることで,現在主流となっているNi-YSZ燃料極と遜色のない性能が得られること,LSCMがGDCの機械的な安定性を高めることが分かった.また,GDCの表面積が大きいほど反応活性が向上することが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LSCM-GDC材料のバインダーの混合や塗布条件,また焼成温度等について,昨年度系統的に実施した結果を受けて,安定した条件で実験を継続した.これらの条件のもとで,電極厚みや混合割合などを変化させた実験を行い,電極のインピーダンスを測定し,LSCMとGDCの粒径を小さくすることで,現在主流となっているNi-YSZ燃料極と遜色のない性能が得られること,LSCMがGDCの機械的な安定性を高めることが分かった.また,GDCの表面積が大きいほど反応活性が向上することが明らかになった.
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今後の研究の推進方策 |
現在,電極の3次元微細構造を収束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)を用いて計測しているが,これを継続する予定である.得られた画像の処理を行い,コンピューター上で三次元構造を再構築する.この構造から,三相界面長さ,比表面積,屈曲度ファクター等の構造パラメータを算出し,別途得られた電極インピーダンスとの比較から,表面反応と三相界面反応相関の寄与度を定量化し,反応メカニズムについて考察する.
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