研究課題/領域番号 |
18H01377
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
児玉 高志 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (10548522)
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研究分担者 |
志賀 拓麿 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10730088)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ナノスケール伝熱 / カーボンナノチューブ / ナノ/マイクロ加工 / 分子内包効果 / 熱電変換 / 高熱伝導材 |
研究実績の概要 |
本申請研究では、カーボンナノチューブ(Carbon nanotube, CNT)への分子内包によるCNTの熱電変換能(電気・熱伝導率・ゼーベック係数)の変調メカニズムを単一チューブ、単一バンドルレベルのナノスケールから線材や配向膜といったマクロスケールまで幅広い形態の試料を準備して測定を行い、その熱電変換特性の変調効果やバルク体への波及効果を実験によって検証する研究である。 2年目は、1年目に構築した測定システムと修正した微細加工プロセスを利用して計画通り、主にsp3系炭素分子が内包されたCNTに対して単一バンドルレベルの電気・熱伝導測定を行い、空のCNTと比較して変化することを明らかにした他、CNTが単一チューブから単一バンドルに変化する過程で伝導率の性能劣化が生じていることなどをナノスケール測定で明らかにすることに成功した。測定工程に関しては、申請者がこれまで取り組んでいた方法論とは異なり、あらかじめサスペンド構造を製作した後にCNTを橋渡しさせて測定を行い、最後に試料の体積評価を行うといった手順の場合であっても、ある程度高い効率で2端子熱伝導測定を行うことができることも確認することができたため、この手順でも同様に研究を進めていく計画である。 また、マクロスケールのCNT材料に関しては、共用施設のダイボンダーを利用して、バルクPt細線4本に試料を橋渡しさせてサスペンド構造を簡便に製作する研究手順を確立し、近年ナノスケールで測定が行われている四端子熱計測法をバルクスケールに拡張することに成功した。これにより線材や薄膜材料においても、接触抵抗を除去して試料の電気伝導率、熱伝導率、ゼーベック係数を高精度で測定することが可能となり、湿式紡糸CNT線材などの測定に着手した。この成果は3月に行われたFNTG学会で発表が行われた他、6月に開催予定の日本伝熱シンポジウムで発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究概要の項でも述べたように、ナノスケールにおいて、様々なCNTの熱電性能評価を開始してsp3系分子を内包させた場合の熱伝導率の変調効果やCNTのバンドル化に伴う伝導率低下現象の実証といった新たな結果が出始めており、また、バルクスケールの材料に対しても測定精度が高い四端子熱電性能評価技術の開発に着手して、一定の成果が得られ始めている。ナノスケールの測定効率をさらに改善するために、デバイスの微細加工プロセスを含めて実験手順の再検討を行うなど、研究計画を若干修正する必要があったことから、総合的におおむね順調に進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、2年間で確立したナノスケール、マクロスケールの測定技術を活用して、共同研究者から提供されている遷移金属ダイカルコゲナイドナノワイヤの内包によるCNTの熱電性能変調効果の実証実験やいまだに完全に解明することができていないCNTのバルク構造化に伴う伝導率低下メカニズムの解明を解明するために研究を遂行していく計画である。 ナノスケールの伝導実験に関しては、これまでの実験で成果が挙がっているサスペンド2端子熱伝導測定デバイスを用いた測定手法を主軸として研究を遂行していく予定である。実験手順としては、LPCVD窒化シリコン膜に対して電子線描画を行って測定系の金属構造をパターニングし、スパッタによってCr/Pt膜の堆積した後にリフトオフによってナノスケール金属配線を準備し、続く電子線描画で測定系の構造を定義した後にレジストを保護膜として窒化シリコン膜を反応性イオンエッチングで貫通させた後、二フッ化キセノンガスエッチング装置と酸素プラズマエッチング装置を利用して、基板材料とレジストを除去してサスペンドデバイスを完成させる。ジクロロエタン溶液に分散させたCNT分散液をサスペンドデバイスに滴下した後、乾燥させて測定デバイスを準備する。電気的手法により、熱伝導率測定を完了した後、測定に成功した試料の構造情報を走査型電子顕微鏡と原子間力顕微鏡による直接観察で定量する。 マクロスケールの伝導実験に関しては、引き続き湿式法や乾式法でCNT線材を製作し、バルク四端子熱伝導計測法を利用して熱電性能評価を行い、構造の違いやナノスケールの物性との比較を行う予定である。これらの実験により得られた研究成果は、研究分担者による分子シミュレーションと融合させて伝導メカニズムを解明していく計画である。
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