現在,福島第一原子力発電所事故を契機に原子力発電所の安全向上のための炉心溶融デブリ炉内保持(以下IVRと略記 )技術の実現が求められている.IVRとは苛酷事故時に溶融燃料を原子炉容器下部プレナムに貯留し,原子炉容器を水没させ崩壊熱除去が長期的に可能とするシステムである.電気出力170万kWのPWRでシビアアクシデント時における原子炉容器の外表面熱流束の解析結果によると,その表面熱流束は最大で1.6 MW/m2にも達している.よって通常の水の飽和プール沸騰のCHFが1.0 MW/m2程度であることを考慮すれば,IVRの実現にはCHFを大きく向上させる技術の開発が必須である.これまでにハニカム多孔質体(HPP)とナノ流体を用いることでCHFを裸面の場合の約3倍(3 MW/m2)に向上することを示した.この要因として,伝熱面のぬれ性向上、毛管力による伝熱面への液供給,蒸気排出孔に直接流入する液供給,蒸気排出孔からの蒸気排出効果が考えられるが,CHFに至るメカニズムはまだわかっていない.そこで,赤外線カメラを用いた伝熱面の温度分布の把握や全反射方を利用したdry out挙動の把握を行うことで局所の現象の解析を行い、以下の知見を得た.(1)裸面の場合,合体気泡が離脱しても温度が高いままの領域であるirreversible dry spotが生じたことでバーンアウトに至る。(2)HPPを設置した場合,バーンアウト発生する直前において,平均熱伝達率は、多孔質直下の方が,セル部よりも高い。(3)HPPによりCHFが向上した要因として,HPPによって連続的な沸騰が生じ,dry areaの広範囲での生成抑制が考えられる. (4)裸面の場合,dry areaの拡大と縮小を繰り返しながら合体気泡が離脱しても濡れないdry areaが生じると最終的にバーンアウトに至る。
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