研究課題/領域番号 |
18H01381
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
巽 和也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90372854)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 2次元サーモリフレクタンス法 / 温度計測 / 確率統計 / ナノワイヤ / ネットワーク / 熱伝導 |
研究実績の概要 |
不連続体の伝熱特性を評価し,その数理モデルを求めるために,ナノスケールの空間分解能を持つ温度計測装置の開発を行い,AgとAuマイクロ電極とAgナノワイヤから構成されるネットワーク構造体の温度と伝熱特性の計測への適用を試みた.温度計測装置として反射率の変化から材料表面の温度を求めるThermo-reflectance imaging(TRI)法を適用し,カメラを用いた2次元TRI法の計測装置を開発した.初年度は,高感度・高分解能イメージング用のカメラ,顕微鏡,マイクロ秒の時間幅で発光可能なLEDパルス光源を購入・改良し,さらに制御用の電子回路を設計して,100nmと1micro-secの空間と時間分解能を持つ温度計測装置を開発した.これに関して,試料の熱膨張に応じて焦点位置の補正を行うために焦点制御装置を導入したが,納品の遅れのため研究計画と予算の繰越を行う事となった. 一方,不連続性液体のマイクロ流路内流れを制御するために,マイクロ電極を用いた誘電泳動力によるマイクロ・ナノ粒子の運動制御(粒子の間隔・速度・タイミングの同期の制御)が可能なデバイスを開発した.Boxcar型電極により空間と時間に亘り周期的に粒子の力を負荷することで流れ中での粒子の整列とタイミングを制御することが可能である.これにより壁面伝熱測定と粒子通過を同期することで不連続性液体の熱伝達率測定が可能である.また,高分子流体および粒子懸濁流体の流動と伝熱特性の測定も行った. これの成果はInt. J. Heat and Mass Transfer, Physics of Fluids, Analytical Chemistryにて3編の論文として発表している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2次元 Thermo-reflectance imaging(TRI)の計測装置,ナノワイヤネットワーク構造体,マイクロ流体デバイスの開発を進めているが,TRI計測装置に関する開発の進捗状況はやや遅れている.これは,平成29年12月に納品予定の自動焦点装置の納期が3月までに遅れたためである.これにより測定が遅れたため,3月に予定していた国際共同研究者のPurdue大学のAlam教授への訪問が延期することとなった.これらに関する予算は繰越を申請した.TRI装置の校正と検証は進んでおり,Au薄膜電極および線径100nmのAgナノワイヤへの通電発熱時の2次元温度分布を測定している.さらに,ナノワイヤネットワーク構造体として,ソウル大学のKo先生に参画してもらい,各種の線径と長さを持つナノワイヤについてその数密度を変えてネットワーク構造体を製作してもらっている.このナノワイヤネットワーク構造体が付設された基盤は変形が可能であり,ひずみを与えた場合の温度分布の検証も行う予定である.さらにマイクロスケールの測定を行うためにサーモグラフィーカメラ(輻射温度計)を用いたマイクロワイヤネットワーク構造体の測定も開始している.これらの構造体の温度分布と伝熱特性を測定し,その結果に本課題で開発中の決定論と確率論を用いた数理モデルを適用することでモデルの妥当性と特性検証を行う予定である.なお,はじめの試みとしてWeibull分布を適用した解析を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
2次元 Thermo-reflectance imaging(TRI)の計測装置はnsと50nmの測定時間・空間分解能を達成する.このために加熱と発光のパルス精度を向上するために信号遅延装置と電子回路の開発を行う.また,熱膨張や振動に伴う試料位置の変化の影響を軽減するため,位置あわせを含めた測定画像の解析アルゴリズムの開発が必要であるが,Matlabを用いたコードの開発を行っている.改良した装置を用いてソウル大学のKo先生らが製作したAgナノワイヤ基盤の温度分布を測定し,伝熱特性の非線形性を確率論に基づく数理モデルにより評価し,見かけの熱伝導率を求める.さらに外乱(ひずみ,接触熱抵抗)による影響を確率密度分布の係数に適用することで工学に活用可能なモデルの開発を行う. また,不連続流体およびその対流伝熱特性を測定するために,TRI計測装置に設置可能なマイクロデバイスの製作を行う.すでに粒子制御が可能なデバイスの製作は完了しており,加熱壁面(電極)や光路,周辺機器の整備と導入を進めている.粒子の運動制御,通電加熱,TRI計測装置の光パルスのタイミングを同期することで50-100nmと100nsの空間分解能での壁面熱伝達率を測定することで,不連続性液体の伝熱特性を評価する.これに不連続性の概念(ネットワーク構造体)を適用した数理モデルを適用することで,伝熱特性のモデルの開発も行う.
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