研究課題/領域番号 |
18H01383
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
津島 将司 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30323794)
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研究分担者 |
鈴木 崇弘 大阪大学, 工学研究科, 助教 (90711630)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 燃料電池 / 物質輸送 / ナノマイクロ構造制御 / 数理最適化 |
研究実績の概要 |
本研究では,固体高分子形燃料電池におけるエネルギー損失を最小化する電極触媒層の設計解を明らかにした上で実証することを目指している.そのために,燃料電池内反応輸送解析と数理科学的手法を融合し,電極触媒層内のアイオノマー,白金担持カーボン,空隙の体積分率分布が燃料電池性能に及ぼす影響を解析し,最適解を導出する.その上で,電極触媒層の多孔質構造形成技術と断面分析手法を適用することで,電極触媒層の設計解の実現と燃料電池性能の向上を目的としている.本年度は,これまでに構築した電極触媒層中のアイオノマー,白金担持カーボン,空隙の体積分率に加えて,気液二相流挙動が電気化学反応と物質輸送へ及ぼす影響を考慮した固体高分子形燃料電池の3次元数値解析モデルを用いて,電極触媒層の構造因子とエネルギー損失(反応過電圧,抵抗過電圧,濃度過電圧)の関係についての検討を行った.その際,白金担持カーボンとアイオノマーが体積分率分布を有する触媒層について解析する手法を開発し,出力電流密度,供給ガス条件などが及ぼす影響について考察を行った.多孔質構造形成技術については,マイクロプリンティング法とドクターブレード法のそれぞれで作製した電極触媒層について触媒担持量を制御することで,触媒層構造とセル性能を直接,比較することができる手法を開発した.その際,触媒層形成手法により電極触媒層の転写性が異なり,触媒層の面方向厚さ分布などの触媒層構造に違いが生じることを見出した.さらに,転写前後の電子顕微鏡観察にもとづき,その要因として,塗工・乾燥過程の違いによるアイオノマー偏析にあることを指摘した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,(1)燃料電池反応輸送解析と大規模数理解析手法の統合による電極触媒層の「設計解」の解明,(2)マイクロプリンティングと断面分析による電極触媒層の構造制御と「設計解」の実証,の研究開発項目を推進することとしている.現在までに,固体高分子形燃料電池の電極触媒層構造について数理最適化を実施する基盤となる気液二相流を考慮した3次元数値解析モデルを構築し,設計解の解明に必須となる白金担持カーボンとアイオノマーが体積分率分布を有する触媒層について解析する手法が開発できている.電極触媒層の構造制御については,従来の遠心分散法,超音波分散法に加えて,高圧分散法をマイクロプリンティングに適用することで安定吐出を可能とした.触媒層構造解析手法についても,イオンビーム二段階加工による断面分析手法を適用することで,アイオノマー厚さを定量的に評価する手法を確立することができている.さらに,精密重量測定にもとづいて電極触媒層の白金担持量を制御することが可能となり,白金担持量を揃えながら異なる触媒層を構築し,それぞれの多孔質構造とセル性能を比較することが可能となった.これまでに,マイクロプリンティング法とドクターブレード法のそれぞれで作製した電極触媒層について多孔質構造が異なり,セル性能に及ぼす影響について明らかになっている.これらの成果は本研究で目的とする,固体高分子形燃料電池のエネルギー損失を最小化する電極触媒層の設計解の解明と実証,に向けて基盤となるものであり,研究開発は順調に推移しているものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,次の研究開発項目を推進することとしている.(1)燃料電池反応輸送解析と大規模数理解析手法の統合による電極触媒層の「設計解」の解明,(2)マイクロプリンティングと断面分析による電極触媒層の構造制御と「設計解」の実証.研究開発の三年目においては,それぞれ次の研究開発を推進する.①電極触媒層の「設計解」を導出する数理最適化手法の研究開発:固体高分子形燃料電池の電極触媒層における白金担持カーボンとアイオノマーの体積分率分布が反応過電圧,抵抗過電圧,濃度過電圧に及ぼす影響を基礎的に明らかにした上で,これらを設計変数としたエネルギー損失の最小化について検討し,設計解としての空間変数分布の導出を行う.②電極触媒層の局所構造制御の研究開発:マイクロプリンティング法およびドクターブレード法を融合した電極触媒層内の白金担持カーボン,アイオノマー,空隙の局所体積分率の制御手法と空間分布の構築手法を確立する.その際,触媒層構造とセル性能について基礎的に明らかにするために,触媒担持量を制御することで,セル性能に関して異なる触媒層構築手法を包含した統一的な比較を行う.さらに,固体高分子形燃料電池の流路部とリブ部のそれぞれに適合した電極触媒層の構築について,マイクロ溝構造の導入も含めた検討を行う.加えて,電極触媒層構築における混合・分散,塗工,乾燥工程などの素過程が多孔質構造に及ぼす影響について,イオンビーム二段階加工による断面分析手法を適用した構造評価を行い,固体高分子形燃料電池の発電性能を最大化するプロセス条件と触媒層構造制御手法を明らかにする.
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