研究課題/領域番号 |
18H01384
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
河野 正道 九州大学, 工学研究院, 教授 (50311634)
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研究分担者 |
塩見 淳一郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40451786)
生駒 嘉史 九州大学, 工学研究院, 助教 (90315119)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高圧ひずみ / 熱伝導率 / 電気伝導率 / シリコン / SiGe |
研究実績の概要 |
HPT加工を施したシリコン材料の熱伝導率に結晶粒のサイズや準安定相の含有率が及ぼす影響を検討するために,HPT加工によってシリコン材料に導入される準安定相Si-3,Si-12の熱伝導率を第一原理計算にて行った.室温におけるSi-3,Si-12の熱伝導率は20W/(mK)(標準的な単結晶シリコンの約1/7程度)であり,報告されている実験値と良く一致した.また計算で得られたフォノンの平均自由行程と累積熱伝導率の関係から,準安定相の熱伝導率をより低減するためには,結晶粒サイズを数十ナノメートル近傍まで微細化する必要があることが分かった. また電子デバイス基板や赤外線レンズなどへの応用が期待されているSiGe試料を対象とした実験も行った.組成の均一な結晶が得られるTLZ法にて作製されたSiGe試料(TLZ-SiGe)にHPT加工を施すと,dc構造に加えてbc8構造に対応する回折ピークがXRDにて確認された.一方で粉末試料から作製したSiGe試料(PW-SiGe)にHPT加工を施すと,SiおよびGeの準安定相であるbc8-Siおよびst12-Geに対応する回折ピークがXRDにて確認されたが,bc8-SiGeに対応するピークは確認されなかった.HPT加工前のTLZ-SiGeの比抵抗は9×10-3 Ωcmであるのに対して,圧縮のみ(0回転)の加工を施すと比抵抗が5×10-2 Ωcmまで上昇したが,10回転で加工した場合でも比抵抗は殆ど変化しなかった.一方,PW-SiGeの場合,圧縮のみの加工でも比抵抗が108 Ωcm以上に上昇したが,10回転の加工を施すことで比抵抗がおよそ2 Ωcmまで減少した.この結果より,TLZ-SiGeではHPT加工により半金属的性質のbc8-SiGeが生成されること,PW-SiGeの場合ではSi-Ge結合が形成され,比抵抗は主に半金属相のbc8-Siにより低下することがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一原理計算にてHPT加工の際に導入される準安定相の熱伝導率を算出し,フォノンの平均自由行程と累積熱伝導率の関係も出来るようになった.また計画通りに電子デバイス基板や赤外線レンズなどへの応用が期待されているSiGe試料を対象とした実験も行い,SiGe材料にHPT加工を施すことによる構造変化や,構造変化に伴う電気伝導特性に関する知見を得られた.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究にてシリコン材料にHPT加工を施すことによって,結晶粒の微細化や準安定相が導入されることが分かったが,結晶粒のサイズや含有率が熱伝導率および電気伝導に及ぼす影響を実験および理論計算の両面から検討する.これまでのHPT加工では最大でも加工回転数は20回転であったが,より回転数を増やすことで特に準安定相導入量の増加を試みる.実験で得られた試料の結晶粒サイズや準安定相含有量を基に理論計算を行い,材料の熱輸送機構を検討する.引き続き,SiGe試料を対象とした実験も継続するが,純粋なGe試料も対象として材料の構造と熱輸送・電子輸送の相関を検討する.材料の構造はラマン分光法およびXRD法,熱伝導率測定はサーモリフレクタンス法およびレーザーフラッシュ法,電気伝導は四探針法で行う計画である.
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