研究実績の概要 |
昨年度に引き続き,電子デバイスなどへの応用が期待されているSiGe試料を対象とした実験を行った.原材料は組成の均一な結晶が得られるTLZ法にて作製されたSiGe試料(TLZ-SiGe)である.昨年度は組成がSi00.6Ge0.4の材料のみを対象としたが,今年度は組成が構造や物性に与える影響を検討するために組成をSi1-xGex (x=0.4, 0.5, 0.7, 0.8)と変化させ,HPT加工を施した.比抵抗を計測した結果,Si0.5Ge0.5の場合,HPT加工前の比抵抗はおよそ0.009 Ωcmであったが,圧縮のみの加工を施した場合には,0.05 Ωcmに上昇した.これは加工により,転位や粒界などの格子欠陥が導入されたためと考えられる.さらに10回転のHPT加工を施すと比抵抗は0.03 Ωcmとなり,圧縮加工のみの場合と比較し低い値となった.10回転の加工では高密度に格子欠陥が導入されているにもかかわらず,半金属性質を有するbc8-Siの形成により,比抵抗が低くなったと考えられる.これに対してGeが多く含まれているSi0.2Ge0.8の場合,加工前の比抵抗は18 Ωcmであったが,圧縮のみの加工を施すと,比抵抗は1.68 Ωcmとなり,加工前よりも低い値となった.Geでは圧縮のみの加工により格子欠陥が導入されたことでキャリアが増加し,比抵抗が低下したと考えられる.比抵抗の計測に加えてフォトルミネッセンス(PL)の計測を行ったが,Si1-xGex結晶はHPT加工後およびアニール後ともにPLによる発光は見られないことがわかった.これは格子欠陥やSiGe粒界が影響していると考えられる.
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