研究課題/領域番号 |
18H01388
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田口 良広 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30433741)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光電子ピンセット / 拡散係数 / センシングチップ |
研究実績の概要 |
夾雑物が存在する実在系において、高速な拡散係数センシングを実現するために、前年度までに開発した光電子ピンセット技術を用いて光学的なフィルタリング・濃縮技術を開発した。2光束干渉したレーザ光の片方の光学位相を変調することで、干渉縞が水平方向に平行移動させることに着目し、動的に変化する縞状の光誘起誘電泳動によって、大きさや誘電率の異なるナノバイオ試料を分離・濃縮する技術を確立するに至った。特に、大きさや誘電率が異なるサンプルでは、駆動可能な周波数や光強度が異なり、追従可能な干渉縞スキャン速度に限界が存在するため、これらパラメータを制御することでナノバイオ試料の分離・濃縮を実現している。 (1)分離パラメータの同定:誘電泳動セルに印加する電圧の周波数ならびに強度を種々に変化させながら光電子ピンセットの捕集量をモニタリングし、大きさの異なる物質の分離パラメータを明らかにした。また、干渉縞スキャン速度を種々に変更し、追従性能からも分離パラメータを同定することに成功した。 (2)濃縮パラメータの同定:干渉縞を平行移動させることでナノバイオ試料を濃縮させる技術を確立した。干渉縞間隔や移動速度を変化させ濃縮パラメータを明らかにした。 (3)分離・濃縮能の実験的検証:ポリスチレンビーズを用いた妥当性検証を行った。濃縮能については、干渉縞移動に伴う1次回折光強度の変化をモニタリングして評価した。分離能については、拡散係数をリアルタイムにモニタリングすることで検証した。その結果、高い濃縮・分離能を有することを実証した。 (4)モノリシックなプレフィルタの開発:赤血球などの比較的大きな夾雑物を予め除去するために、チップ上にモノリシック集積可能なプレフィルタを提案した。前年度に開発したプラスチック基板に対して超短パルスレーザによって微細な貫通孔を形成し、クロスフロー濾過が可能な一体成型チップを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、当初計画していた研究実施項目に関して、全て達成することができた。ナノバイオ試料の分析に必要不可欠な分離・濃縮をマイクロチップ内で操作可能な新しい技術を提案するに至った。提案手法の妥当性を解析的かつ実験的に世界に先駆け成功している。また、コスト削減やディスポーザブル応用のためのプラスチック基板への適用性についても明らかにしている。さらに極微量分離・濃縮・分析に向けたマイクロチャネル設計まで達成しており、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、極微量分析を実現するために、ピコリットル液滴内のナノバイオ試料分析に向けたセンシング技術を提案する。ピコリットル液滴列を超高速並列処理が可能となれば、医療・創薬分野への貢献は著しい。そこで、前年度までに開発してきた光電子ピンセットを用いてピコリットル液滴をマニピュレートする技術を開発し、光分析応用の妥当性を検証する。
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