研究課題/領域番号 |
18H01388
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田口 良広 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30433741)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 光電子ピンセット / 拡散係数 / センシングチップ |
研究実績の概要 |
本研究では、ピコリットル液滴の生成には、連続相として油相流体、分散相として水相流体を用いた液滴形成を用い、送液速度や流路パラメータを制御することで任意の液滴列を形成する。また、液滴を光電子ピンセットによってマニピュレートし、自在に混合・反応・分離等の操作をマイクロ流体チップ内で実現する新しいセンシングチップの創生を目指している。2020年度は、新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言の発出とキャンパス閉鎖ならびに入構規制により、予定通り実験を遂行することが困難であった。当初の計画では、超微量サンプル量での多検体試料を高感度に検出可能なデバイスを確立するために、必要サンプル量の劇的な削減方法の検討を行う予定であったが、実験的検証が困難であるため、デバイス設計ならびに解析を中心に行った。 (1)液滴形成用マイクロ流体コンポーネントの設計:ピコリットル液滴を形成するための2相合流流路を有する新しい流体チップを設計した。流路幅、流路長をパラメータとして、有限要素解析から最適な流路設計を行った。また、圧縮空気を用いた送液システムならびに、マイクロ流体チップのパッケージングシステムを設計した。 (2)液滴内サンプルへの光電子ピンセット適用性の検証:液滴内に分散するナノ試料に対する、光電子ピンセットによる誘電泳動力を明らかにした。特に、油相が存在することによる誘電泳動力への影響は未解明であり、有限要素解析を用いて励起パラメータを検証した。 (3)ピコリットル液滴内の拡散係数センシング:ピコリットル液滴内のナノ試料に対して2光束干渉したレーザを照射し、光誘起誘電泳動による縞状の濃度分布形成と物質拡散過程を観察するための光路設計を行った。 (4)光電子ピンセットによる液滴マニピュレーションの検証:液滴そのものを光電子ピンセットによって駆動可能か検証するために、励起パラメータを解析的に明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、新型コロナウイルス感染症に伴うキャンパス入構制限などにより当初計画していた研究実施項目に関して、特に実験的検証に遅れが出ている。2019年度は当初の計画よりも研究が各段に進展していたため、研究期間全体にわたる影響は少ない。2020年度は実験系の検証は保留として、本来2021年度に取り組むべき数値シミュレーションを2020年度に取り組んだため、2021年度の研究計画への影響はほとんどない。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度には新型コロナウイルス感染症の影響で取り組めなかった実験的検証を集中的に行い、本提案の妥当性を検証する。医療応用を目指し、ナノバイオ試料の一つであるリポソームを測定対象としてセンシング性能の実験的検証をおこなう。
|