研究課題/領域番号 |
18H01389
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
山田 純 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (40210455)
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研究分担者 |
河野 貴裕 芝浦工業大学, 工学部, 助教 (30801790)
中村 嘉恵 日本大学, 理工学部, 助教 (10772741)
江目 宏樹 山形大学, 大学院理工学研究科, 助教 (80785551)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | パルスレーザー / 形成外科 / 生体 / シミ / 色素沈着 |
研究実績の概要 |
本研究では,シミやあざ,傷跡などのレーザー治療に資する,皮膚生体組織とレーザー光の相互作用を定量的に把握できる数値解析モデルの開発を目的とする。研究2年目にあたる2019度には,まず,皮膚におけるレーザー光の伝播を,皮膚を角質層,表皮,基底層,真皮を有する層構造からなる連続体と仮定し,ふく射の輸送方程式を解くことで把握することを試みた。この解析には.MonteCarlo法が用いられた。 一方,シミやあざなどの色素沈着は,皮膚内に離散的に分布するメラニン顆粒の色素により生じるため,レーザー吸収による発熱は,色素の存在する局所.かつ,離散的に生じる.ここでの伝熱現象を把握するために,離散的に分布するメラニン顆粒を発熱源とする熱伝導解析を実施した。 この年度には,以上二つのモデルをカップリングするモデルを提案し,レーザーの波長,出力,パルス幅,さらには,媒質の光物性分布,メラニン顆粒や色素の数密度が,皮膚組織に与える影響(ダメージ)を予測した。なお,この解析モデルに関しては,凝集したメラニンがレーザー光の吸収に与えるに影響を調べるために,電磁波同解析を開始している。 また,考案した解析モデルの妥当性を検証するために,透明樹脂に,皮膚の散乱性を再現するアルミナ粒子に加えて,レーザー光の吸収を担うメラニン顆粒を分散させた疑似皮膚を製作した。その疑似皮膚に,実際にパルスレーザーを照射し,ダメージの状況を観察する実験を開始した。 さらに,この年度には,層構造を有する皮膚のふく射物性値分布を計測できる装置設計を行った。まず,年度前半に,装置の光学設計をおこない,十分な性能を有する光学部品の選定、アライメントを決定した。後半には,装置筐体を含めた構造設計をおこなった。 上記の内,数値解析モデルに関しては,ギリシャで開催された,RAD-19で研究発表を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年後半から2019年度前半にかけて,若干の遅れがみられたが,その遅れを取り戻し,当初の研究計画どおりに,研究は進められている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる2020年度では,2019年度に設計の完了した計測装置の制作,および,それを用いた計測と逆解析によるふく射物性分布推定を行う。ここでは,層構造を有する人工皮膚を対象に,製作した装置により計測を実施し,その計測データを元に,層構造ごとにふく射物性値が推定できるかどうかを検証する。 さらに,2020年度では,解析モデルの妥当性を検証するモデル実験を行う。ここでは,2019年度に準備を進めてきたシリコン樹脂製の疑似皮膚を供試体として,レーザー照射実験を実施する。照射実験には,医療用と同等のパルスレーザー(1064 nm)を用いる。照射後の供試体を共焦点レーザー顕微鏡,SEM,AFM等で観察し,そこで生じている現象を考察し,解析モデルと比較,モデルの妥当性を検証する。最終的には,培養皮膚モデルにメラニンを導入し,レーザー照射実験を行うことを通じて,本研究で得た知見が,実際の治療の現場で応用できるかを検証する。
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