研究課題/領域番号 |
18H01391
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
吉田 勝俊 宇都宮大学, 工学部, 教授 (20282379)
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研究分担者 |
山仲 芳和 宇都宮大学, 工学部, 助教 (00804238)
嶋脇 聡 宇都宮大学, 工学部, 教授 (10344904)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自転車 / ゆらぎ / 予測 / モデル化 / パラメータ同定 |
研究実績の概要 |
本研究は,自転車走行のふらつきを予測する新技術を開拓し,対自転車の事故を防止する自動運転自動車の実現に寄与しようとするものである.具体的には,自転車の走行実験から得たふらつきの確率分布を動的に再現する動的モデルを導出し,そのパラメータを同定することで,ふらつきが経時的に及ぶ範囲の予測器を構築する.さらに,伊藤確率解析を駆使することで,予測処理のリアルタイム化を図る. 令和元年度は,前年度までに被験者8名から取得したロール運動データのモデル化手法について,統計的信頼性を担保できる新手法を提案し,その有効性を示した.前年度までの手法では,モデル同定の精度を確率密度関数の残差2乗和により評価していたが,この手法では,確率密度関数の類似度しか評価できず,評価結果から統計的信頼性を判断するのが困難であった.そこで,令和元年度は,統計的仮説検定でよく用いられるKolmogorov-Smirnov距離を,そのまま,同定の評価関数として用いる方法を提案・実装した.ただし,その際,1変数累積確率分布関数に基づく従来のKolmogorov-Smirnov距離を,次元拡張する必要があった.本研究では,これに成功し,得られた新手法に基づいて,前年度の手法と遜色ないモデル同定結果を得た.さらに,その際の評価関数値を Kolmogorov-Smirnov検定にそのまま用いることで,本研究のモデルが,通常のガウス分布と比べて,有意に実験データを説明することを示した. 以上の成果は,国際的に権威ある査読付き論文誌(Applied Sciences誌,JCRインパクトファクター2.217)に採択された. さらに,本研究の要素技術に関する基礎研究について,実験データに基づいてモデルの過渡応答を予測する新手法の開発,等価パラメータを同時検出可能な新しい最適化手法の開発を行った.その成果は,2報の査読付き原著論文(システム制御情報学会論文誌)として採択された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度当初計画は,実験環境の本格的整備とモデル同定手法の高度化であった. まず,走行実験環境の整備については,計画通り,3次元動作解析システムのカメラ台数を拡充することで,前年度予備実験で取得したロール角に加えて,操舵角,車輪接地点変位を同時測定できるシステムを開発し,当初予定の多次元モデル同定に必要な測定データの次元数を確保できることを確かめた.以上より,当初実験計画は,おおむね順調に進展していると判断できる. また,モデル同定については,ロール運動データのモデル化手法について,統計的信頼性を担保できる新手法を提案し,その有効性を示した.モデル同定の統計的信頼性の確保は,本課題の成果の信頼性に直結するものであり,モデル同定手法の高度化を図る当初計画は,おおむね順調に進展していると判断できる. 以上,本研究の進捗は,おおむね順調に進展していると思われる.特に,モデル同定手法の高度化に関する成果は,権威ある査読付き論文誌(Applied Sciences誌,JCRインパクトファクター2.217)に採択されている. さらに,最終年度の確率解析に資する基礎研究として,実験データからモデルの過渡応答を予測する手法と,等価パラメータを同時検出可能な新しい最適化手法の開発を行った.その成果は,2報の査読付き原著論文(システム制御情報学会論文誌)として採択されている.
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は,当初計画を若干拡張した非線形3自由度モデル(実験データに対応)を構築し,そのパラメータ値を同定し,得られたモデルに,非定常確率解析を適用する.その結果を踏まえて,自転車のふらつき運動の拡散経路をリアルタイム予測可能なシステムの開発に着手する.
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