研究課題
本研究の目的は,数理モデルによってドライバーの眠気推定のメカニズム,体調急変検知のメカニズム,ドライバーの周囲環境の変化に対する応答を説明することのできる数理モデルを提案することである.学術的独自性は,四つあると考えている.一つ目は,Kotaniらによって研究された自律神経の活動状態が心臓系にどのような影響を及ぼすかを再現したモデルとOlufsenらが提案した末梢血管のモデルに心臓からの拍出流量のモデルと血管系のモデルを統合することにある.二つ目は,心臓内科の専門医との共同作業により疾病発生時を模擬できる数理モデルについて研究を行うことにある.三つ目としては,数理モデルに登場する係数を決定する必要がある.そのために,分岐を有する血管系のモデル実験によって圧力損失係数を,また,被験者のデータから自律神経系と血管系との連成係数を決める必要があり,多数の被験者のデータからパラメータを決定する.その際には機械学習を利用する.四つ目として,ドライバーの眠気を誘発する自律神経系の変化は人間の情動だけでなく外部環境の変化によっても影響を受けるため,外部環境の一つである温熱環境の変化と自律神経指標の変化の相関性を評価する数理モデルを提案する.今年度の研究では,3番目の着眼点についての研究を推進した.具体的には,計算結果に影響を与える各種パラメータの影響を感度解析し,さらに血管分岐部の圧力損失のモデル化と係数に関する検討を行った.なお,シミュレーションの初期条件を作るためには被験者の生体信号が必要であるが,被験者による生体信号測定を行うために新たに連続血圧計を特注し,連続血圧計で取得された様々な情報に機械学習を適用することで,計算用の入力データを作ることに成功した.
2: おおむね順調に進展している
過去に提案された数理モデルのサーベイを行い,数理モデルの問題点の抽出し,その問題点を修正した新たなプログラムを作成し,計算を行った.以前のモデルに基づく計算結果よりも新たなモデルに基づく計算結果は実験結果をより忠実に再現できていることが確認できた.具体的には,計算結果に影響を与える各種パラメータの影響を感度解析し、さらに血管分岐部の圧力損失のモデル化と係数に関する検討を行った.なお,シミュレーションの初期条件を作るためには被験者の生体信号が必要であるが、被験者による生体信号測定を行うために新たに連続血圧計を特注し,連続血圧計で取得された様々な情報に機械学習を適用することで,計算用の入力データを作ることに成功した.
連続血圧計は特注品だったことから、納品までに時間を要し、その後、取り扱いに習熟し、安定して計測が可能になるまで経験を要したものの、ようやく、計算に必要な入力情報を取得できることろまで到達することができた.被験者の人数を増やすことと、計算事例を増やすことが課題である.今後の研究方針としては,事例数を増やして、より多くの被験者からの生体信号情報に基づいた計算結果から、体調変化や漫然状態の予測が可能となることを目指す.
すべて 2018
すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)