研究課題/領域番号 |
18H01395
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
川原 知洋 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (20575162)
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研究分担者 |
佐藤 有紀 九州大学, 医学研究院, 准教授 (90508186)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生体シミュレータ / ニワトリ胚 / 血管誘導 / 力学刺激応答計測 |
研究実績の概要 |
当該申請者は,ニワトリの初期胚を用いて安価・簡易・高効率に薬剤試験や病態シミュレーションに利用できる生体プラットホーム(Egg-in-Cube)の開発を推進している.本研究課題では,これまで確立してきた2次元的な血管網の誘導技術を3次元に発展させるとともに,従来技術では実現が困難であった血管網の局所的な力学刺激応答試験に応用することを目的としている.本年度は以下のような研究を行なった. 3次元的に血管を部分誘導する技術の確立:前年度に確立した人工殻作製方法を用いて,実際にニワトリ胚を培養する実験を行った.その結果として,血管誘導の成功率や誘導長にバラつきが生じることが分かってきた.そこで,実験モデル(インクで着色した液体を用いる)をさらに改良し,センサ類を用いて要因について考察を行った.結果として,流路に取り付けるチューブの形状だけでなく方向(角度)を大きくすると白身が先にチャネル内に侵入することに起因して誘導率が低下することが確認できた. インジェクション方法の開発:数ミクロンの微粒子等を数100ミクロン径の血管に注入するための方法として,遠隔操作型の4自由度のマニピュレーションシステム,及び,簡易なインジェクションを実施できるパッチ型のデバイスをそれぞれ新たに開発した.また,これらの方法を用いて血管に微粒子を打ち込むと血液内を微粒子が遊走し,ニワトリ胚内を循環することが確認できた.またこの際の様子を数時間程度に渡って観察できること,および,誘導した血管内であればより鮮明な観察ができることが分かった. 遺伝子組み換え体での実験環境整備:鳥類胚を観察する場合,どうしても明視野観察では血管壁や血球の確認が難しい場合があった.そこで,発光タンパク質を生成する遺伝子組み換え鳥類の初期胚(卵)を実験室で取り扱うための機器や承認手続き等の準備を完了させ,蛍光観察を行う環境を整備した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニワトリ胚の血管を3次元的に部分誘導する技術や,力学刺激応答計測試験を行うための要素技術について着実に開発が進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
実験と解析による誘導メカニズムの解明について:これまでに確立した3次元的な血管誘導技術を用いて,ニワトリ胚を透明人工殻内で培養しながら漿尿膜上に形成される血管網を数ミリ角の透明チューブ内に誘導するためのメカニズムの解明を引き続き進める.また,誘導を行いながら刺激を加えることで血管の誘導長をより長くするような方法についても実験的な解析を試みる.最終的には,力学的および生物学的な両面の観点から培養中に自律的な血管誘導が生じる主要因について明らかにする.
誘導した血管の力学刺激と評価について:実際に3次元的に部分誘導した血管のみに刺激を加えた際の生体応答について引き続き調査する.これまで開発してきた要素技術(3次元的血管部分誘導・観察システム・インジェクションシステム・蛍光観察)を組み合わせて,チューブ端部をアクチュエータで引っ張りながら(様々な力学刺激を加えながら),その際の細胞個々の動態をより詳細に観察することを試みる.また,その際に得られたデータを用いて細胞の振る舞いについて力学刺激による影響や効果について考察する.
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