研究課題/領域番号 |
18H01396
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
劉 孝宏 大分大学, 理工学部, 教授 (60230877)
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研究分担者 |
松崎 健一郎 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (80264068)
中江 貴志 大分大学, 理工学部, 准教授 (80579730)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 回転体の振動 / 動吸振器 / 強制振動 / 非線形振動 / オートマチックトランスミッション |
研究実績の概要 |
自動車業界では,燃費の向上のため,省気筒数化,低回転からのロックアップの傾向にあり,一方では,高出力化も進んでいる。エンジンは,爆発により強制的なねじり振動を生じ,これらの開発動向はいずれもねじり振動を増大させる要因となっている。本研究は,自動車のエンジンの爆発に起因したねじり振動により,新たな製品開発を阻害する問題について,これまでに例を見ない高い振動減衰能を有する機構を用いた遠心振子動吸振器および振動減衰のための新たなロックアップダンパ部トルク伝達経路の最適設計手法を確立することを目的としている。平成30年度は,遠心振子を用いた動吸振器の理論的最適化を図るため,パラメータの同定,プログラミングおよび基礎的な数値計算を開始した。その結果,サイクロイドやエピサイクロイド曲線と比較して,より振動を低減可能な軌道があることがわかった。その成果を,国内学会であるDynamics and Design Conference 2018および日本機械学会九州支部北九州講演会で研究発表を行った。また,ねじり振動低減を目的としたロックアップダンパの設計として,非線形性を有する場合の理論解析と基礎的な実験を行い,その成果を,リスボンで開催された国際会議Vibration Engineering and Technology of Machineryおよび日本機械学会九州支部北九州講演会で研究発表を行った。遠心振子動吸振器の実験装置に関しては,設計を完了した。高度な振動減衰を目指した新たなロックアップダンパ部の設計については,遺伝的アルゴリズムを用いたプログラミングが完了し,最適なトルク伝達要素のパラメータを選定することができた。また,基礎実験装置についても設計・製作を完了して,基礎実験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は,(1)遠心振子動吸振器の理論的最適化,(2)最適軌道動吸振器および高い減衰能を有する機構を用いた動吸振器の基礎実験装置の基本設計,(3)振動減衰のための新たなロックアップダンパ部トルク伝達経路のモデル化と理論解析,および(4)振動減衰のための新たなロックアップダンパ部トルク伝達経路に関する基礎実験という4テーマで研究を実施した。(1)に関しては,目標であったパラメータの同定,プログラミングおよび基礎的な数値計算を開始することができ,基礎的な数値計算も実施することができた。その成果は,国内学会であるDynamics and Design Conference 2018および日本機械学会九州支部北九州講演会で研究発表を行っている。(2)に関しては,目標であった最適軌道動吸振器に対する基礎実験装置の設計は完了したものの,高い減衰能を有する機構を用いた動吸振器の設計については,設計段階で新たな機構を考慮する必要が生じたため,平成31年度に再設計を実施する予定である。(3)に関しては,目標であった遺伝的アルゴリズムを用いた最適化プログラムの作成を完了し,最適な伝達経路の検討を進めることができた。伝達経路間の非線形性も考慮する必要が生じたため,数値計算を実施し,その成果をリスボンで開催された国際会議Vibration Engineering and Technology of Machineryおよび日本機械学会九州支部北九州講演会で研究発表を行っている。(4)に関しては,目標であった基礎実験装置の設計・製作が完了し,基礎実験も開始することができた。基礎実験の過程で,設計変更をする必要が生じたため,平成31年度に新たな実験装置の製作を行う予定である。 以上から,研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は,振り子の軌道を最適化した遠心振子動吸振器および高い減衰能を有する機構を用いた動吸振器について,理論および実験の両面から最適設計を検討する。また,振動減衰のための新たなロックアップダンパ部トルク伝達経路についても,平成30年度に実施した理論解析をもとに,実験装置の改良と実験および理論解析との比較検討を実施する。具体的には以下のように実施する。 (1) 遠心振子動吸振器の理論的最適化:平成30年度に完成した遠心振子動吸振器に関する数値計算プログラムを使用して,遠心振子動吸振器の最適な軌道を,遺伝的アルゴリズムを用いることにより,より詳細に検討を進め,円軌道,エピサイクロイド軌道等との比較検討を実施する。高い減衰能を有する機構を用いた動吸振器についても,遺伝的アルゴリズムを援用して最適な設計仕様を検討する。 (2) 最適軌道動吸振器および高い減衰能を有する機構を用いた動吸振器の基礎実験:平成30年度に設計を完了した最適軌道動吸振器について,実験装置の製作を完了し,回転軸系に動吸振器を取り付けた実験を開始する。また,高い減衰能を有する機構を用いた動吸振器については,改良設計を実施した上,実験装置の製作を開始する。 (3) 振動減衰のための新たなロックアップダンパ部トルク伝達経路の検討:平成30年度に製作した基礎実験装置における不具合を解消するため,設計変更を行う。改良した実験装置を設計・製作し,実験を開始する. (4) ダンパにおける非線形性を考慮した理論解析:ダンパ部での最適設計を実施する過程で,実用化を目指すためには,ダンパ部の断片線形特性や様々な非線形特性を考慮した解析を実施する必要があるため,非線形性を考慮した解析モデルを新たに作成し,理論解析を開始する。
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