研究課題/領域番号 |
18H01401
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
昆陽 雅司 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (20400301)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 触覚ディスプレイ / バーチャルリアリティ / 振動伝播 |
研究実績の概要 |
没入型バーチャルリアリティシステムで必要となる全身触覚ディスプレイの発展のために,接触により身体に発生する弾性波の空間的広がりの再現により,臨場感を向上させるという新しいパラダイムを提案する.このような分布的な振動情報を理解するために,従来考慮されてこなかった高周波振動の身体上の伝播特性を解明し,振動刺激により任意の伝播特性を再現することを目的とする. <学術基盤強化と科学的実証> (1)身体の振動計測と物理モデリング:衝突運動および身体の構造的特性を反映する振動伝播特性をモデル化し,物理モデル表現により異構造をもつ身体の伝播振動を疑似的に再現可能にするために,スティック状のツールを把持し,対象物にインパルス的に衝撃を加えた際に生成する振動特性を計測し,運動やコンタクトメカニクスを考慮した物理モデルを構築した.衝突速度や,衝突物体の材質,形状の影響による波形の違いを再現できることを確認した. (2)心理評価と知覚モデリング:ヒトの高周波振動受容特性を解明し,知覚上等価となる振動刺激を同定し,振動伝播再現による臨場感向上と,伝播特性変化による主観変化を実証するために,圧電振動子を用いて複数のキャリア周波数や振幅変調する波形に対する心理物理特性を調査した.また,異なるキャリア周波数でも感覚上同じと感じられる等価変換モデルを構築した. <実用システムと応用開拓> (3)普及型装着ディスプレイの開発:性能に制約がある普及型振動子でも臨場感を出せる身体装着型触覚ディスプレイを開発するために,既存のリニア共振型振動子(LRA)を利用して,無線で装着可能なディスプレイを開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に従い,概ね順調に進捗している. (1)身体の振動計測と物理モデリングに関しては,まず,ヒトが把持したツール上で発生するする衝突振動のモデリングから始め,衝突速度や対象物の物性が振動波形に及ぼす影響の調査を開始し,運動エネルギやコンタクトメカニクスを考慮した物理モデルの妥当性を確認することができている.当初の予定通り,物理モデルは次年度も継続して実施し,振動が身体に伝播する過程についても実施する. (2)心理評価と知覚モデリングについては,高周波振動の包絡線成分の知覚に関して,弁別閾が明らかになり,今後の振動伝達と振動の変調方式に関して重要な指針を得ることができた.この成果は英文誌IEEE Accessで発表した. (3)普及型装着ディスプレイの開発は,本年度はディスプレイの試作として,LRA振動子を用いて小型で装着可能なシステムを開発し,低遅延無線の技術を用いて,振動を生成できることを確認した.本開発は計画通り次年度も継続して行う.
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画に従い,予定通り研究を推進する.また,特に高周波振動の知覚特性関して,周波数の変調が可能となる重要な研究成果が得られたことから,既存のLRA型振動子でより臨場感の高い体感を得るための触覚変調方式について,重点的に研究を行う.また,複数の振動子を同時に使用した体験について,検証し,振動伝播再現の有効性の検証を行う.
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