研究課題/領域番号 |
18H01403
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
河本 浩明 筑波大学, システム情報系, 准教授 (00400713)
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研究分担者 |
清水 如代 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (40620993)
丸島 愛樹 筑波大学, 医学医療系, 講師 (40722525)
羽田 康司 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80317700)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歩行アシスト / 自立歩行獲得 / ハビリテーション / 医療・福祉 |
研究実績の概要 |
脳性麻痺や神経筋疾患など生まれながら疾患を有する小児に対して,早期治療を実施することで,小児は障害を乗り越える新しい方法を獲得することが指摘されている.そのため,運動障害児に対して,自立歩行を獲得するため可能な限り早く開始できる歩行支援方法が求められている.本研究では,小児の早期の歩行動作に見られる脚を左右に広げ,立位姿勢を容易にしながら,片脚に体重をのせ左右の脚交互に体重移動を繰り返して進むといった左右側方の身体揺動(往復)運動を実現するため,骨盤の空間的動作に着目した運動障害児の自立歩行獲得のための骨盤6自由度動作アシスト技術を開発する. 本研究によって,歩行を体重移動に基づく全身運動として捉えた歩行支援が可能となり,臨床現場で取り入れることができなかった早期歩行支援を提供することができる可能性があり,脳性麻痺や神経筋難病の小児に対し,これまで疾患により運動機会を失ってきた時期に実施可能な運動獲得(ハビリテーション)支援分野の開拓が期待される. 当該年度は,以下の手順で研究を進めた.1)支援機器の要求として骨盤動作支援の設計に必要な仕様を決定するための健常小児の歩行獲得段階の早期歩行の解析を実施し,体重移動周期,歩行速度,歩幅,歩行ピッチ等を抽出した.2)骨盤を保持するサドルに対して,早期歩行時の揺動運動をアシストするための骨盤の回旋運動,挙上運動.固定動作を実現する機構を開発,ダミー人形を使用した実験とリハビリテーション医師との議論を通じて,問題点の抽出,アシスト機構の改良を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は,以下の手順で研究を進めた.1)支援機器の要求として骨盤動作支援機構の設計に必要な仕様を決定するための健常小児の歩行獲得段階の早期歩行の解析を実施し,体重移動周期,歩行速度,歩幅,歩行ピッチ等を抽出した.2)骨盤動作支援機構に対して,早期歩行時の揺動運動をアシストするための骨盤の挙上運動,及び骨盤固定を実現する機構を開発し,ダミー人形を使用した実験とリハビリテーション医師との議論を通じて,問題点の抽出,アシスト機構の改良を実施した.歩行時の左右重心揺動運動の主な支援となる骨盤の挙上運動支援には,対象者の脚の背後にフレームを配置し,足部と同様に地面に2点接触する骨格構造(V字型の逆)を構築した.当該骨格構造にサドルを取り付け,当該骨格構造を左右に1点接触するように揺動させることで,骨盤の挙上運動(揺動運動)を実現させることを可能した.また,骨盤固定としては,左右の骨盤側面に固定用パッドを配置し,これらのパッドをベルトでつなげ,骨盤前面でベルトを閉めることで骨盤を安定的に支持できるようにした.ダミー人形による基礎試験,及びリハビリテーション医師との議論から,実際の揺動動作の支援には,セラピストなどが小児の歩行状態を常にモニタリングしながら適宜揺動動作を操作したほうが安全であるとの意見があったことから,骨盤動作支援機構にセラピストが揺動動作の操作が可能なハンドル機構を取り付けることとなり,次年度の開発課題となった.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,昨年度の開発知見に基づき,引き続き骨盤動作アシスト技術の開発を実施すると共に対象患者による歩行支援機器の性能評価の準備を行う. (1)骨盤動作アシスト技術の開発:セラピストなどの補助者の操作により小児の歩行時の骨盤動作をアシストするサドル回転・揺動機構を開発し,歩行支援機器とする. サドル回転機構では,セラピストが操作するハンドルを小児が搭乗するサドル後方に設置し,ハンドルの回転に応じてサドルを水平方向に回転させることで歩行時の骨盤回旋のアシストを実現するリンク機構を開発する.サドル揺動機構では,小児の前額面方向の歩行動作のアシストを実現させるために,セラピストの前額面方向のステアリングハンドルの操作に応じて,サドルが移動することで歩行時の左右側方の体重移動をアシストすることが可能なリンク機構を開発する. また,体幹固定機能:骨盤の可動性を維持しながら,体幹上部を固定し,歩行時の立位姿勢を保つことを可能にし,脱着が容易な上半身サポート機能を開発する.さらに,開発したサドル機構の両側にホイールを取り付け,セラピストがステアリングハンドルを前方へ押すことによって前進移動が可能となる歩行支援機器とする.以上,開発した歩行支援システムに対して,小児用ダミー人形を使って,歩行アシスト実験を行い,アシスト時の支援機器の安全性の確認,及び,機能性能評価を実施し,抽出された技術課題を基に改良を行う.この実験ー評価ー改善からなる研究開発サイクルを繰り返し回して行き,臨床研究適用可能な水準の支援機器としていく. (2) 対象者による歩行支援機器の性能評価:実証試験実施のための実験プロトコルを作成する.まず,支援歩行が可能な試験環境を構築すると共に,リスクアセスメントを実施し,十分な安全性を考慮した実験手法を設定する.次いで,対象者の選択基準,除外基準,および,リクルート方法を決定する.
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