研究課題/領域番号 |
18H01405
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安 ち 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (70747873)
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研究分担者 |
淺間 一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50184156)
宮井 一郎 社会医療法人大道会(神経リハビリテーション研究部), 神経リハビリテーション研究部, 部長 (60510477)
下田 真吾 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, ユニットリーダー (20415186)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 起立動作 / 片麻痺患者 / 筋シナジー |
研究実績の概要 |
我が国の高齢者の割合は25%を超え,超高齢社会となっている.高齢者になると脳卒中で脳が損傷する割合が増え,その後遺症で片麻痺となると身体機能が低下する.そして片麻痺になるとリハビリテーションを受け,運動機能の改善が図られる.これに対して我々の先行研究から,健常者の起立動作には4つの筋シナジーが存在するものの,片麻痺になると筋シナジーの活動が適切に調整できないことが分かっている.しかし一方でリハビリテーションにおいて筋シナジーの活動がどのように変化しているのか分かっていない.またリハビリテーションではその介入を理学療法士の技能や経験に依存しており,定量的な評価が難しかった. そこで本研究では,理学療法士の介入を定量的に評価する手法を構築し,異なる症状をもつ患者に対する介入動作を計測し,それによって運動が改善する効果を調べる.片麻痺患者の症状に対する個々の介入手法が分かれば効果的なリハビリテーション手法の設計が可能となる.本年度は具体的には,理学療法士の上肢に表面筋電計を貼り付け,筋活動を計測することで肩や肘,手首,母指の運動を定量的に評価した.また同時に片麻痺患者の運動中の筋活動を計測することで筋シナジーを算出し,リハビリ前後の変化を調べた. その結果,理学療法士は主に片麻痺患者が離臀する前に膝部を引き,離臀のタイミングに合わせて膝や臀部の伸展を促していることが分かった.またその結果として,片麻痺患者は介入前は離床に寄与する筋シナジーの活動を適切に調整できていなかったのに対して,介入を受けると活動タイミングが改善するということが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,片麻痺患者の起立動作に介入をする理学療法士の技能を定量的に評価し,異なる患者の症状に対する介入手法を明らかにし,それらをリハビリテーションシステムに応用することを目指している.本年度は理学療法士の技能を定量的に計測する手法を構築し,それらを使うことで介入動作の評価が可能なことを示した.また実際に片麻痺患者に対する介入動作とそれに対応する身体機能の変化を調査することで,理学療法士の介入によって片麻痺患者の運動が改善していることが調べられた.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針の1つは,より多くの異なる症状をもつ患者の運動およびそれに対する理学療法士の介入動作の計測を行う.片麻痺患者の症状は脳の損傷部位や回復の程度によって異なるため,それらの異なる症状に対応する介入動作を明らかにすることが重要である. またこれらの介入動作をリハビリテーション装置に実装することで,効果的なリハビリを実現するシステムの構築を図る.
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