本研究は,空気圧人工筋で駆動される柔軟な筋骨格ロボットアームを用い,学習初期において物理的な拘束下で試行錯誤を行った方が,最終的に拘束が無い状態で同様の運動を実現することが容易になるという実例を示すことを目標としている.当該年度では,前年度において,研究代表者の所属機関に変更があったため,実験環境の移動などを予定していたが,コロナ禍で対応が困難となったため,特に,学習アルゴリズムに関する研究を進めつつ,現所属で利用できる簡易的なロボット実験装置の開発を進めた. 学習アルゴリズムについて具体的には,観測データの低次元空間において軌道生成や最適制御を実行する手法の提案により国際論文誌論文2報を発表したほか,ノイズを印加した領域のみがニューラルネットワークとして機能する数理モデルの提案により国際論文誌論文1報を発表した.これらの手法は,本研究の主眼である物理的な拘束下における試行錯誤を通じた学習に用いることができる手法であり,本研究計画の進展に大きく寄与した. 簡易的なロボット実験装置について具体的には,元の装置と同様に空気圧で駆動される柔軟なロボットアームを製作し,各アクチュエータの内圧を指示し,制御することによって平衡姿勢をとる基礎的な制御系の実装までを終えた.しかし,これらについては,現時点までで成果報告および学習アルゴリズムとの統合には至らなかった. 研究代表者の所属機関の変更や,コロナ禍により,実験の実施に関わる項目において遅れを生じたものの,学習アルゴリズム等,実験の実施を伴わない部分において着実な成果報告を行い,本研究はおおむね計画通りに遂行されたと考えられる.
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