研究課題/領域番号 |
18H01416
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小笠原 悟司 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (40160733)
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研究分担者 |
折川 幸司 北海道大学, 情報科学研究科, 助教 (50781324)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | EMI / パワーエレクトロニクス機器 / アクティブフィルタリング技術 / ACC / ACF |
研究実績の概要 |
研究代表者,1997年にアクティブ素子を用いてインバータの発生するコモンモード電圧を相殺してEMIを抑制するアクティブコモンノイズキャンセラ(ACC)を提案し[2],IEEE Power Electronics society, 1998 Transactions Prize Paper Award を受賞した。このACC はコンプリメンタリのトランジスタを用いたエミッタフォロワ回路をアクティブ回路として使用しオープンループ制御によりコモンモード電圧を相殺したため,(i)クロスオーバひずみにより数V の完全に相殺できない成分が残り20 dB 程度の減衰効果しか得られない,(ii) アクティブ回路の遅れのため数MHz以上の周波数領域で抑制効果が得られないなどの問題があった。 (a) 低周波帯におけるアクティブフィルタリング技術 本研究では,残留コモンモード電圧のみを検出してこれをゼロにするように,低電圧のオペアンプをアクティブ回路として使用してフィードバック制御する新しいACC を開発し,最大で 50 dB 程度の減衰特性を達成できることを実験により確認した。また,デバイスと放熱器との間の浮遊容量による減衰特性の悪化の防止についても検討した。 (b) 高周波帯におけるアクティブフィルタリング技術 本研究においては,1 GHz 程度のゲインバンド積を有する高周波オペアンプを使用したフィードバック制御を用いて,数MHz~100 MHz 程度の高周波帯で従来よりも高い減衰特性を有する新しいアクティブフィルタリング技術を開発し,実験によりその効果を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低周波領域のアクティブフィルタリング技術については,残留コモンモード電圧のみをフィードバックにより補償することにより,従来の ACC と比較して大きな減衰特性が得られることを実験により確認している。従来の ACC は減衰量がおおむね 20 dB 程度に止まっていたのに対して,開発した ACC は減衰量が最大で 50 dB 程度得られ,大幅な特性改善が可能であることを示した。しかも,追加したフィードバック回路では 10 V 程度の低電圧だけを取り扱えばよいため,汎用のOPアンプが利用可能であるという優れた特長も有している。 一方,高周波数領域のアクティブフィルタリング技術については,低周波領域のコモンモード電圧を受動フィルタを用いて取り除いた後に,低周波領域の受動フィルタでは低減できない高周波領域のコモンモード電圧を低減するアクティブフィルタリング技術を開発し,実験によりその妥当性・有用性を確認した。その結果,数 MHz ~ 100 MHz の周波数領域において,10 ~ 20 dB 程度の減衰特性が得られることを確認した。 以上のようなことから,本研究はおおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
低周波領域のアクティブフィルタリング技術においては,減衰特性を改善して 50 ~ 60 dB の減衰特性を得るという目標はほぼ達成することができている。今後は,従来のACCのもう一つの問題点である 400 V 系のインバータに適用できないとことに対して改善していく予定である。すなわち,従来の ACC で用いていたエミッタフォロワ回路に用いるコンプリメンタリトランジスタの 400 V を超える高耐圧の素子が存在しないためである。今後はエミッタフォロワを用いない方法ならびに現在の耐圧のトランジスタを用いて高電圧に適用可能な回路方式の両面から検討を進める予定である。 高周波領域のアクティブフィルタリング技術においては,当初目標の数 MHz ~ 100 MHz程度までの周波数領域においてコモンモード電圧を低減することはすでに達成できている。今後は,コモンモード電圧を低減することにより,実際に伝導性EMIならびに放射性EMIをどの程度低減できているかについて実験的に検討する予定である。また,さらにこの周波数領域における減衰特性を改善するために,フィルタに使用している受動部品の特性改善にも取り組む予定である。
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