研究課題/領域番号 |
18H01428
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
三島 智和 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (40370019)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | パワーエレクトロニクス / 三相AC-DCコンバータ / 複合共振回路 / パルス周波数制御 / ソフトスイッチング / バッテリ定電圧定電流充電 / パワー半導体スイッチ / 直流給電 |
研究実績の概要 |
2019年度は,三相AC-DC変換装置の実証試験を本課題に取り組んだ。まず,前年度に試作実験により明らかになった提案する電力変換装置における電力変換効率の向上を大きく妨げる要因を,シミュレーションおよび実験結果から分析した。本技術課題を解決する手段として,回路構成する高周波トランスの励磁インダクタンスを活用した複合共振回路方式を考案した。これは,いわゆる「LLC」と称される共振形電力変換回路であり,パワー半導体スイッチのソフト転流や,低ノイズなスイッチング動作を実現する技術として有効性が期待できる。シングルステージ三相AC-DCコンバータとして適用した事例は稀少である。また電力制御手段として,これまでの固定周波数位相シフトパルス幅変調制御と対比して,より低損失かつ出力調整が可能なパルス周波数制御が好適であることをシミュレーションにより明らかにした。以上を踏まえて,定格3kWの試作器を新たに構築し,実験評価を行った結果,最高91.3%の効率を達成し,昨年度の回路方式より約1%の効率改善を得た。さらに,効率改善以上に特筆すべき結果として,回路動作周波数を昨年度試作器の20kHzから50kHzと約2.5倍の高周波化を達成した。これより,回路体積は理論上5分の1のサイズダウンが期待できることを明らかにした。 これらの成果は,国際会議論文2件,および国内研究会2件にて口頭発表を行い,学外の専門家からの評価を得た。また,大学議寿シーズ展示会(イノベーションジャパン2019)に出展し,その場でマッチングした企業との共同研究を締結するに至っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の中心である三相AC-DCコンバータに具備すべき性能(高周波スイッチング特性,シングルステージ周波数変換回路,入力高力率,定電圧電流出力制御など)を概ねクリアしており,当初の計画に沿って研究活動は進行していると判断している。今年度,新たに考案した複合共振回路により,パワー半導体スイッチの高効率なソフト転流動作は実現したが,目標とする電力変換効率への到達には,さらにクリアすべき問題が明確となった。 当研究成は,国内外で複数研究発表しており,提案手段がもつ電力変換回路としての有効性や新規性については一定の評価を得ている。 以上を総合的に勘案し,「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の取り組みでその有効性や新規性が明らかとなった複合共振方式三相AC-DCコンバータについて,車載バッテリなどの定電圧定電流充電(CCCV)を高精度に実点することを目指し,ディジタル制御を組み入れた電源システムの構築を行う。これにより,負荷となるバッテリの電圧および電流検出に基づき,電力変換回路の制御変数であるパルス周波数や位相シフトパルス幅などを高度に調整して,より高効率に出力制御することを実験による実証する。また,回路中の配線浮遊インダクタスやバスバーのインピーダンス,高周波トランス部での高周波漏れ磁束の低減などを行い,より低損失な磁性材料により各インダクタを構成した上で,装置の高電力密度化(2kW/リットル)を試みる。 さらに,提案装置の単相システムおよび双方向電力制御について検討を行い,試作器による諸特性を実証する。 今年度得られた結果については,SCIジャーナルであるIEEE Transactions on Power Electronics (IF: 7.224)へ投稿し,広く公表する。さらに,産学共同研究を発展させ,大型競争的資金獲得へチャレンジする。
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